種類がいろいろあってごちゃごちゃになるんだよね
この記事では神経系分野の脳梗塞について解説します。
本記事の内容
- 脳梗塞の分類
- アテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓症の違い
- 脳梗塞の治療と特徴
この3つのポイントを中心に勉強していきましょう!
Contents
脳梗塞は血流障害により脳が壊死する病態
脳梗塞は、脳動脈が閉塞、狭窄することで脳細胞が壊死する疾患です。
症状は片麻痺、失語、意識障害などが見られます。
種類は
- アテローム血栓性脳梗塞
- 心原性脳塞栓症
- ラクナ梗塞
があります。
細い血管と太い血管のどちらを梗塞するかで分類していきます。
細い血管を閉塞するラクナ梗塞
細い血管(穿通枝動脈)が高血圧により障害され閉塞したのがラクナ梗塞です。
意識障害などの症状ほぼ無く、比較的症状が軽いのが特徴です。
→楽な梗塞と覚えましょう。
繰り返すと認知症やパーキンソン症候群の原因になるのでしっかりコントロールするのが重要です。
リスク因子は高血圧などの生活習慣病です。他の脳梗塞でも共通です。
血栓の生成場所の違い:心原性脳塞栓症 VS アテローム血栓性脳梗塞
次は太い血管が詰まる心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞をみていきます。
まず詳しい病態に入る前にさっくりと両者の違いをみましょう。
心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞は血栓ができた場所、でき方に違いがあります。
まず名前からお気づきでしょうか?
同じ血栓が詰まる病気なのに、片方は「脳塞栓症」もう一方は「脳梗塞」。
違いは
- 脳梗塞:アテロームなどで脳の動脈が狭まって詰まる病気
「脳血管が梗(おおむね)塞さがる」 - 脳塞栓症:心臓などで作られた血栓が脳に飛んできて詰まる病気
「脳血管を栓でふさぐ」
つまり、血栓が他から飛んできたか、そこで作られたかで名前が分けられています。
この違いが、治療の違いに繋がります!!
- アテローム血栓性脳梗塞:そこで作られた血栓→新しい血栓→血小板血栓
→抗血小板薬(アスピリンとか) - 心原性脳塞栓症:飛んできた血栓→古い血栓→フィブリン血栓
→抗凝固薬(ワーファリンとか)
それではそれぞれの詳しい病態を見ていきます。
アテローム血栓性脳梗塞は動脈硬化が原因
アテローム血栓性脳梗塞の原因は動脈硬化(アテローム硬化)です。
動脈硬化により血管が狭くなり、表面に血栓ができることで閉塞します。(血栓性)
血栓の一部が剥がれ抹消の動脈を一過性に閉塞することがあります。
血小板が主体の血栓は脆く、すぐに溶解し再開通するので数分ほどで症状は改善します。
これがTIA(一過性脳虚血発作)です。
アテローム血栓性脳梗塞では前駆症状としてTIAがみられることが多いです。
他に特徴として安静時に発症することが多いです。なので睡眠中に発症して起床時に気づくと言ったケースがあります。
アテローム血栓性脳梗塞の急性期は梗塞範囲の縮小と合併症予防が目的
アテローム血栓性脳梗塞の急性期はとにかく早期に行うことで梗塞巣の縮小、合併症予防をすることが重要です。
それぞれの薬の役割は
- 血栓を溶解:アルテプラーゼ、ウロキナーゼ
- 血栓の拡大、予防:抗血小板薬(オザグレル)、抗凝固薬(アルガトロバン)
- 脳保護:エダラボン
- 脳浮腫予防:濃グリセリン・加糖注射液、20%D-マンニトール液
です。
各薬剤のポイントとして押さえておきたいのが
アルテプラーぜは発症から4.5時間以内に投与する必要があります。
効果が高いですが時間が経つと出血のリスクが高くなるためです。国試で必須なので必ず押さえましょう。
エダラボンは急性腎不全でイエローレターが出ています。
また覚えなくていいですが理解しやすいように補足します。
アテローム血栓性塞栓症でなぜ抗凝固薬のアルガトロバンが使われるのか?血小板が主体なのになんで?と思ったかもしれません。
アルガトロバンは抗トロンビン薬で抗凝固薬に分類されますがトロンビン阻害作用により抗血小板作用も得られるためアテローム血栓性塞栓症に使われます。
なのでラクナ梗塞や心原性脳塞栓症には使われないです。
この後説明しますが、心原性脳塞栓症の急性期治療との違いなので知っておくといいかもしれません。
アテローム血栓性脳梗塞の慢性期は抗血小板薬が主役
アテローム血栓性脳梗塞の血栓は血小板が主体の血栓なので、慢性期には予防として抗血小板薬が治療の中心になります。
具体的にはアスピリン、チクロピジン、シロスタゾール、クロピドグレルなどがあります。
また、動脈硬化やアテロームを悪化させたくないので、脂質異常症、高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある場合はそちらの治療も行います。
降圧剤は慢性期には血圧コントロールのために使用されますが、急性期では梗塞巣の拡大のリスクがあるため原則禁忌です。
これは降圧剤を使用することで局所脳血流の低下を引き起こすためです。
止血薬の詳しい作用機序はこちらを参照してください。
心原性脳梗塞は心臓由来の血栓が閉塞する
心原性脳塞栓症は心房細動などでできた血栓が飛んで、脳の血管に詰まり発症します。
アテローム性と異なりフィブリンが主体の血栓です。
完成しているフィブリン血栓が飛んで、スポっと詰まるので虚血が一気に完成します。
なので一過性脳虚血発作(TIA)が起きることは少ないです。
アテローム性と逆で活動時に発症しやすいのが特徴です。
活動時に心臓内の血栓が飛んで脳動脈に運ばれやすいためです。
急性期治療はアテローム性とほぼ同じ
アテローム性の急性期とほぼ同じです。
少し押さえておきたいのが、再発予防のために急性期は点滴のヘパリンを用い、その後、抗凝固薬のワーファリンなどに切り替わる点です。
(ヘパリンは、脳梗塞でのエビデンスが乏しいが点滴治療がヘパリンしかないから心原性脳塞栓症で使っています。そのためアテローム性で使われることは少ない)
↑ここがアテローム性の急性期と違うところです。
心原性脳塞栓症の慢性期の主役は抗凝固薬
血栓予防に抗凝固薬を使います。
- ワーファリン
- DOAC:ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン
があります。
ワーファリンは歴史のある薬ですがPT-INRを計る必要があったり相互作用(ビタミンK禁忌、食品ではクロレラ、青汁、納豆)が多いなどのデメリットがあります。