
衛生の計算問題で、いちばん出題されるのがここです。 相対危険度と寄与危険度。名前は難しそうですが、やっていることは割り算と引き算だけです。
この記事のゴールは、2×2表を見た瞬間にA・B・C・Dを正しい場所に置けるようになること。表さえ正しく書ければ、あとは機械的に計算できます。逆に、表の置き方を間違えるとすべてズレます。そこだけ丁寧にいきます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
コホート研究とは
要因を持つ人と持たない人を集めて、未来に向かって追跡し、結果が出るかどうかを見届ける研究です。前向きコホート研究ともいいます。
たとえば、喫煙習慣がある人100人とない人100人を集めて、月に1回ずつ病院で調査に協力してもらい、何年も追いかける。そして最後に、何人が肺がんになったかを数える。これがコホート研究です。
コホート研究の3つの特徴
| 特徴 | 中身 |
|---|---|
| 観察し続けて、どうなるかを見届ける | 時間軸は現在 → 未来 |
| 疾病の発生率がわかる | → だから相対危険度・寄与危険度が出せる |
| 金と時間がかかる | 人を集めて何年も追跡するため |
最重要は2つめです。「発生率が出せるのはコホート研究だけ」。 症例対照研究では発生率は出せません。この対比が、この単元最大の出題ポイントです。
2×2表の置き方

| 疾病あり | 疾病なし | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 要因あり | A | B | A+B |
| 要因なし | C | D | C+D |
行が要因、列が疾病。 ここを逆にすると、以降の計算が全部ずれます。
タバコと肺がんの例でいえば、
- A … タバコを吸っていて、肺がんになった人
- B … タバコを吸っていて、肺がんにならなかった人
- C … タバコを吸っておらず、肺がんになった人
- D … タバコを吸っておらず、肺がんにならなかった人
そして、タバコを吸っている人の合計は A+B、吸っていない人の合計は C+D です。
相対危険度(リスク比)― 割り算

相対危険度 = 要因あり群の発生率 ÷ 要因なし群の発生率

相対危険度 = {A ÷ (A+B)} ÷ {C ÷ (C+D)}
意味は、「要因があると、発生率が何倍になるか」。リスク比とも呼ばれます。
計算手順は2段階です。
- 要因あり群の発生率 = A ÷ (A+B)
- 要因なし群の発生率 = C ÷ (C+D)
- 1を2で割る
分母がA+BとC+Dであって、A+CやB+Dではないことに注意してください。行の合計で割ります。
読み方
- 相対危険度 = 1 … 要因と疾病に関連なし
- 相対危険度 > 1 … 要因がリスクを上げる
- 相対危険度 < 1 … 要因がリスクを下げる(予防的)
薬の臨床試験では、相対危険度が1未満なら「その薬はイベントを減らす」という読みになります。
寄与危険度 ― 引き算

寄与危険度 = 要因あり群の発生率 − 要因なし群の発生率

寄与危険度 = A ÷ (A+B) − C ÷ (C+D)
相対危険度が割り算、寄与危険度が引き算。 使う材料(2つの発生率)はまったく同じで、最後に割るか引くかだけの違いです。ここを取り違える人が非常に多いので、
- 相対 … 「相手に対して何倍か」→ 割り算
- 寄与 … 「要因がどれだけ上乗せしたか」→ 引き算
と意味から思い出せるようにしておくと安全です。
寄与危険度の意味は、「その要因を取り除けば、どれだけ発生を減らせるか」。公衆衛生の対策を考えるときは、倍率(相対危険度)より実数でどれだけ減るか(寄与危険度)のほうが役に立ちます。
なお臨床研究の文脈では、この発生率の差を絶対リスク減少率と呼びます。寄与危険度と絶対リスク減少率は、同じものを別の角度から呼んだ言葉だと理解しておいてください。
計算してみる ― 第108回・問226
実際の国試の問題で確かめます。妊婦のリチウム製剤服用と胎児の心奇形発生についてのコホート研究です。
| 心奇形あり | 心奇形なし | 合計 | |
|---|---|---|---|
| リチウム製剤服用群 | 18 | 482 | 500 |
| 薬剤非服用群 | 18,000 | 1,182,000 | 1,200,000 |
- 服用群の発生率 = 18 ÷ 500 = 0.036(3.6%)
- 非服用群の発生率 = 18,000 ÷ 1,200,000 = 0.015(1.5%)
- 相対危険度 = 0.036 ÷ 0.015 = 2.4
答えは2.4。 割り算2回と割り算1回、それだけです。桁が大きいので怯みますが、1,200,000分の18,000は1.5%とわかればあとは簡単です。
国試ではこう問われる
| 回 | 問われ方 | ポイント |
|---|---|---|
| 第98回・問19 | 要因曝露に起因する疾病発生頻度が得られる研究手法 | コホート研究。発生率が出せるのはコホートだけ |
| 第108回・問226 | リチウム製剤の相対危険度 | 上で計算したとおり2.4 |
| 第102回・問125 | 喫煙者と非喫煙者の脳血管疾患発生率の表(相対危険度・寄与危険度つき) | 年齢階級ごとに相対危険度が下がり、寄与危険度は上がる。2つの指標が別の動きをすることを読ませる |
| 第110回・問122 | 5つのコホート研究を統合した飲酒と大腸がん | 「飲酒しない群142人/10万人年」「23.0g/日以上196人/10万人年」から相対危険度・寄与危険度を計算させる |
| 第101回・問193 | 「絶対リスク減少率」に該当するもの | 対照群の発生率と治療群の発生率の差。寄与危険度と同じ考え方 |
| 第106回・問119 | サルコペニア改善の表から相対危険度を計算 | 「健康教育+筋トレ+サプリ」群の「健康教育のみ」群に対する相対危険度は約0.76 |
第102回・問125は良い問題です。年齢が上がるにつれて相対危険度は4.0 → 1.4へ下がるのに、寄与危険度は22.3 → 30.2へ上がる。高齢になるほど非喫煙者でも脳血管疾患が増えるので「倍率」は縮みますが、「差」は広がる。割り算と引き算で結論が逆に見えるという、この単元の本質が詰まっています。
まとめ
- コホート研究は前向き。要因あり/なしの人を集めて、未来を追跡する
- 発生率が出せるのはコホート研究だけ。だから相対危険度・寄与危険度が計算できる
- 欠点は金と時間がかかること
- 2×2表は行が要因、列が疾病。分母は行の合計(A+B、C+D)
- 相対危険度 = {A/(A+B)} ÷ {C/(C+D)}(割り算、何倍か)
- 寄与危険度 = A/(A+B) − C/(C+D)(引き算、どれだけ上乗せか)
- 寄与危険度は臨床研究の絶対リスク減少率と同じ考え方
次は症例対照研究とオッズ比|コホート研究との違いを読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
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衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
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