
検査の性能を表す指標です。必須問題でも実践問題でも出ますし、実務でも新型コロナの抗原検査やインフルエンザ迅速検査の話でそのまま使います。
ここでつまずく人の原因は、ほぼ1つに絞れます。2×2表の「どの方向に割るか」を間違えるからです。感度と特異度は縦に割ります。コホート研究の相対危険度が横に割るのと逆です。
この記事では、講義で使われている糖尿病の検査キットの具体例で、表の向きごと頭に入れてしまいます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
言葉の意味を先に
難しい定義より、この2行が全部です。
- 感度:有るものを「有る」と言える度合い
- 特異度:無いものを「無い」と言える度合い
病気を持っている人を、ちゃんと「陽性」と判定できるか。それが感度。 病気を持っていない人を、ちゃんと「陰性」と判定できるか。それが特異度。
2×2表を作る

糖尿病を判定するキットを1,100人に使ったとします。
| 検査値 | 糖尿病あり | 糖尿病なし | 合計 |
|---|---|---|---|
| 陽性 | A 90人 | B 200人(偽陽性) | A+B 290人 |
| 陰性 | C 10人(偽陰性) | D 800人 | C+D 810人 |
| 合計 | A+C 100人 | B+D 1,000人 | 1,100人 |
ここでの置き方は、列が「本当に病気かどうか(真実)」、行が「検査の結果」です。
- A … 病気あり・陽性(真陽性)
- B … 病気なし・陽性(偽陽性)
- C … 病気あり・陰性(偽陰性)
- D … 病気なし・陰性(真陰性)
B が偽陽性、C が偽陰性。この2つの名前も、位置とセットで覚えてください。
感度と特異度の計算

感度 = 検査陽性の人数 ÷ 糖尿病ありの人数 = A ÷ (A+C)
= 90 ÷ (90 + 10) = 90 ÷ 100 = 90%
特異度 = 検査陰性の人数 ÷ 糖尿病なしの人数 = D ÷ (B+D)
= 800 ÷ (200 + 800) = 800 ÷ 1,000 = 80%
「縦に割る」を体に入れる
大事なのはここです。感度も特異度も、分母は「列の合計」です。
- 感度の分母は A+C(本当に病気の人の総数)
- 特異度の分母は B+D(本当に病気でない人の総数)
つまり表を縦に見て割る。「真実の側で割る」と言い換えてもいいです。
対して、相対危険度は分母が A+B、C+D、つまり横でした。同じ2×2表でも、割る方向が違う。これを意識しておくと、本番で混線しません。
陽性的中率・陰性的中率
感度・特異度と対になる指標として、的中率があります。こちらは横に割ります。
- 陽性的中率 = A ÷ (A+B) … 陽性と出た人のうち、本当に病気だった割合
- 陰性的中率 = D ÷ (C+D) … 陰性と出た人のうち、本当に病気でなかった割合
上の糖尿病の例なら、陽性的中率 = 90 ÷ 290 ≒ 31%。感度90%のキットでも、陽性と出た人の約3割しか本当の糖尿病ではないわけです。
的中率は有病率で変わる
ここが重要です。感度と特異度は検査キットの性能なので、どんな集団に使っても変わりません。 ところが的中率は、その集団の有病率によって変わります。
病気の人がほとんどいない集団で検査すれば、陽性のほとんどが偽陽性になり、陽性的中率はガクンと下がります。「感度が高い検査だから、陽性なら病気に違いない」とは言えない――実務でもそのまま効いてくる考え方です。
第110回・問194がまさにこれを問いました。感度95%、特異度90%、有病率10%の集団に使うと、1,000人中、
- 病気の100人のうち陽性 = 95人
- 病気でない900人のうち偽陽性 = 90人
- 陽性は合計185人。うち本当の病気は95人
陽性的中率 = 95 ÷ 185 ≒ 51%。感度95%でも、陽性的中率は約50%にしかなりません。
国試ではこう問われる
| 回 | 問われ方 | ポイント |
|---|---|---|
| 第103回・問205 | インフルエンザ判定キットの表から感度と特異度の組合せ | 陽性(罹患100/非罹患10)、陰性(罹患25/非罹患500) → 感度 100÷125 = 80.0%、特異度 500÷510 ≒ 98.0% |
| 第107回・問226 | 検査法の感度と特異度の組合せ | 同じ形式。縦に割るができれば取れる |
| 第110回・問194 | 感度95%・特異度90%・有病率10%のときの陽性的中率 | 約50%。的中率は有病率に依存する |
| 第107回・問57 | 間質性肺炎の指標として特異度が高いのはどれか | KL-6。臨床検査の知識と組み合わせて問われる |
第103回の計算をやってみます。感度 = 100 ÷ (100+25) = 100 ÷ 125 = 0.80。特異度 = 500 ÷ (10+500) = 500 ÷ 510 = 0.980。割り算2回です。表の縦を見るだけ。
補足:講義とITMZでは陽性的中率・陰性的中率は扱われていませんが、第110回で実際に出題されているため、この記事では補って解説しています。
まとめ
- 感度は「有るものを有ると言える」割合 = A ÷ (A+C)
- 特異度は「無いものを無いと言える」割合 = D ÷ (B+D)
- どちらも分母は列の合計。「縦に割る」「真実の側で割る」
- B が偽陽性、C が偽陰性
- 陽性的中率 = A ÷ (A+B)、陰性的中率 = D ÷ (C+D) で、こちらは横に割る
- 感度・特異度は検査の性能で集団によらない。的中率は有病率で変わる
次は疫学データの落とし穴|因果関係の5条件とバイアス・交絡を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。