感染症の予防

一類感染症と三類感染症|最も危険な7つと、全部経口感染の4つ【薬剤師国家試験】

一〜五類感染症のマインドマップ
一〜五類感染症のマインドマップ

一類と三類を1本にまとめたのは、性格が正反対だからです。

一類は致死率が高くて危険だから原則入院。三類は致死率は高くないが、広げる力が強いから就業制限。「なぜ制限するのか」の理由がまったく違う2つを並べて見ると、感染症法が何を基準に類型を切っているのかがはっきりします。

合わせて11疾患。語呂で名前は覚えられるので、この記事ではそれぞれがどんな病気なのかを肉付けしていきます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

一類感染症:致死率が高いから隔離する

一類感染症の語呂
一類感染症の語呂

エバラ 天然 クリーミーペースト 鍋 一つまるごともらった

この7つは、ウイルス性出血熱(5つ)・痘瘡・ペストの3グループに分けると整理できます。

グループ 疾患 病原体
ウイルス性出血熱 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱 ウイルス
痘瘡(天然痘) 痘瘡 ウイルス
ペスト ペスト 細菌(ペスト菌)

一類で細菌性なのはペストだけ。あとはすべてウイルスです。この1点だけでも、「一類の細菌はどれか」という問いに即答できます。

ウイルス性出血熱の5つ

症状は名前のとおり発熱と出血で、致死率は15〜90%と非常に高い。だから一類に入っています。

語呂ではエバラ(エボラ)・クリーミー(クリミア・コンゴ)・鍋(南米)・まるごと(マールブルグ)・もらった(ラッサ)の5つがこれに当たります。天然痘だけが出血熱ではないと分けて覚えると、7つの中の構造が見えてきます。

痘瘡(天然痘):根絶されたのに一類のまま

痘瘡は、急激な発熱・頭痛のあとに発疹が出て、致死率20〜50%という重い病気です。

最大のポイントは、1980年にWHOが根絶を宣言していること。人類が根絶に成功した唯一の感染症です。

ではなぜ、すでにこの世にない病気が一類に指定され続けているのか。理由は生物テロに使われる危険性があるからです。根絶されたということは、誰もワクチンを打っていない=集団免疫がないということでもあります。ここは理由まで含めて覚えておくと納得しやすい場所です。

ペスト:ノミが媒介する細菌感染症

ペストはペスト菌による細菌感染症で、ノミが媒介します。

ノミを介してげっ歯類(ネズミなど)の間で流行を繰り返し、そこから家畜などを経由してヒトに感染することがあります。中世ヨーロッパの黒死病がこれです。

第99回・問19(必須)では、二類感染症を選ばせる問題の誤り選択肢としてペストが入っていました。「危険そう=二類」と考えると引っかかります。ペストは一類です。

三類感染症:経口感染で集団感染を起こすから就業を制限する

三類感染症の語呂
三類感染症の語呂

赤い チ ○ コ

三類の4疾患は、細菌性赤痢・腸チフス/パラチフス・O157(腸管出血性大腸菌感染症)・コレラ。

繰り返しますが、4つとも経口感染です。危険性そのものは一類・二類ほど高くありませんが、特定の職業の人がかかると集団感染を起こす。だから飲食物の取り扱いなどへの就業制限がかかります。入院勧告はありません。

細菌性赤痢

赤痢菌の経口感染で発症します。かつては非常に多い感染症でしたが、近年は年間100人を下回るところまで減っています(2024年は74人)。

コレラ

コレラ菌の経口感染。機序が問われやすいので、流れで押さえてください。

コレラ菌が小腸の微絨毛に定着する → コレラ毒素を産生 → 米のとぎ汁様の水様性下痢 → 脱水症状

治療は電解質を含む水分の補給です。菌をどうこうするより、失われた水と電解質を戻すのが基本になります。発生数は年間数人です(2024年は2人。講義収録時点では50人程度でした)。

腸チフス・パラチフス

チフス菌・パラチフスA菌による経口感染です。どちらも患者数は激減しており、腸チフスが年間40人前後、パラチフスは10人未満です(2024年は腸チフス42人・パラチフス7人)。

なお、講義では病原体を「ネズミチフス菌」と言っている箇所がありますが、腸チフスの原因菌はチフス菌(Salmonella Typhi)です。ネズミチフス菌(S. Typhimurium)は食中毒を起こすサルモネラで、別物になります。

腸管出血性大腸菌感染症(O157)

三類の中でいちばん問われるのがこれです。

ベロ毒素(志賀毒素)を産生し、出血性大腸炎を起こします。重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、腎不全に至ることがあります。

国試ではこう問われる

  • 第111回・問65:「腸管出血性大腸菌感染症の重篤化と関連性が高いのはどれか」→ 溶血性尿毒症症候群。トキシックショック症候群、過敏性腸症候群などが誤り選択肢
  • 第105回・問19(必須):「消毒等の対物措置が必要とされる感染症はどれか」→ 腸管出血性大腸菌感染症

なお、ITMZの三類のノードにはO157の記載が抜けており、講義でも講師本人が「ここに入ってないじゃん」と指摘しています。語呂の図のほうには入っているので、語呂で覚えていれば取りこぼしません。

一類と三類を並べて見る

一類 三類
数 7 4
なぜ規制するか 致死率が高い 集団感染を起こす
措置 原則入院 就業制限(入院なし)
感染経路 さまざま(ノミ、体液など) すべて経口感染
検疫感染症 全部が該当 該当しない
細菌は ペストのみ 4つとも細菌

いちばん下の行が、地味に効きます。一類はペスト以外ウイルス、三類は4つとも細菌。「細菌性の感染症はどれか」という形で聞かれたときの手がかりになります。

まとめ

  • 一類は7疾患。ウイルス性出血熱5つ(エボラ・クリミアコンゴ・南米・マールブルグ・ラッサ)+痘瘡+ペスト
  • 出血熱は発熱と出血、致死率15〜90%。一類で細菌性なのはペストだけで、ノミが媒介する
  • 痘瘡は1980年に根絶宣言されたが、生物テロの危険性があるため一類のまま。致死率20〜50%
  • 三類は4疾患で、すべて経口感染。危険性ではなく集団感染のおそれから就業制限がかかる(入院勧告はない)
  • コレラは小腸微絨毛に定着してコレラ毒素を産生し、米のとぎ汁様の水様性下痢を起こす。治療は電解質を含む水分補給
  • O157はベロ毒素を産生し、重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす
  • 一類はペスト以外ウイルス、三類は4つとも細菌

次は二類感染症の覚え方|結核・ジフテリア・ポリオ・SARS・MERSを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

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