
二類感染症は6つ(語呂での数え方。厚生労働省の感染症分類の一覧では、鳥インフルエンザをH5N1とH7N9に分けて7疾病と数えます)。この中で圧倒的に厚いのが結核です。空気感染、N95マスク、DOTS、耐性菌——結核だけで1問作れるくらいの情報量があり、実際に必須問題でも実践問題でも繰り返し出ています。
残りの5つ(ポリオ・ジフテリア・鳥インフルエンザ・MERS・SARS)は、感染経路と特徴を1つずつ押さえれば足ります。まず語呂で名前を固定し、それから結核に時間を使う、という順番で進めてください。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
語呂と全体像

日暮里に布陣とり、まだ結果出さず
| 疾患 | 病原体 | 感染経路 |
|---|---|---|
| ポリオ(急性灰白髄炎) | ポリオウイルス(RNA) | 経口感染 |
| ジフテリア | ジフテリア菌 | 飛沫感染 |
| 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9) | A型インフルエンザウイルス | 飛沫・接触感染 |
| MERS(中東呼吸器症候群) | MERSコロナウイルス(RNA) | 飛沫・接触感染 |
| 結核 | 結核菌 | 空気感染・飛沫感染 |
| SARS(重症急性呼吸器症候群) | SARSコロナウイルス(RNA) | 飛沫・接触感染 |
措置は必要に応じて入院。一類のような「原則入院」ではありません。
鳥インフルエンザはH5N1とH7N9だけが二類で、それ以外の亜型は四類です。この2つの型は検疫感染症でもあります。
結核:二類の主役
空気感染(飛沫核感染)
結核でいちばん大事なのは空気感染することです。
飛沫感染は、咳やくしゃみで飛ぶ水滴(飛沫)が落ちるまでの範囲で起こります。一方空気感染(飛沫核感染)は、飛沫の水分が蒸発した後に残る飛沫核が空気中を漂い続けるため、同じ部屋にいるだけで感染しうる。
だから結核病棟に入るときはN95マスクが必要になります。通常のサージカルマスクでは飛沫核を防げません。空気感染するから N95、という因果で覚えてください。
空気感染する感染症は多くありません。結核・麻疹・水痘の3つを押さえておけば、ほぼ足ります。
発生状況
- 罹患率・死亡率は低下傾向
- しかし欧米に比べるとかなり高い
- 世界的にはHIVの蔓延で免疫力が落ちた人が増え、結核が増加
- そのため再興感染症として注目されている
「低下傾向だが欧米より高い」というねじれた言い方が、そのまま選択肢になります。「低下傾向にあり、欧米並みになった」というような記述は誤りです。
第110回・問17(必須)の「再興感染症はどれか」の答えが結核だったのは、この文脈です。
治療:多剤併用とDOTS
治療は多剤併用の化学療法です。特効薬としてイソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)が挙げられます。
そしてDOTS(直接服薬確認療法)。医療者や薬剤師が目の前で服薬を確認する方法で、これにより治療完遂率が上がります。
なぜそこまでするのか。途中でやめると菌を殺しきれず、耐性菌ができるからです。実際、イソニアジド耐性菌・リファンピシン耐性菌が増えていることが問題になっています。
耐性菌を作らないために、最後まで飲ませる。そのための仕組みがDOTS。
この一文で、治療の項目はつながります。
ポリオ(急性灰白髄炎)
ピコルナウイルス科のポリオウイルス(RNAウイルス)による経口感染です。
咽頭や小腸の粘膜で増殖したあと、中枢神経(運動神経)に感染して破壊し、麻痺を残すことがあります。ただし麻痺が出るのは0.1%程度で、95%は不顕性感染です。
ワクチンの話が重要です。かつては弱毒生ワクチンが使われていましたが、まれにワクチン由来の麻痺(副反応)が起こるため、現在は不活化ポリオワクチン(IPV)が使われています。日本では現在、野生株による報告はありません。
第103回・問128では、「現在、定期接種において、ポリオに対するワクチンは、弱毒生ワクチンではなく不活化ワクチンが用いられている」が正しい記述として出題されました。ここはそのまま得点源です。
ジフテリア
飛沫感染による上気道粘膜の疾患です。
- 咽頭や扁桃腺の周りに偽膜を形成し、窒息することもある
- ジフテリア毒素を産生し、タンパク合成を阻害する → 筋力低下、心筋炎
DPT-IPV混合ワクチン(2024年4月からはHibを加えた5種混合ワクチン)の接種により、国内の報告は近年0件が続いています(2019〜2024年はいずれも0件)。
治療はペニシリン、エリスロマイシン、そして抗毒素血清。抗毒素血清は北里柴三郎とベーリングが開発したもので、ITMZにもその注記があります。
MERSとSARS:2つのコロナウイルス
MERS(中東呼吸器症候群)
- MERSコロナウイルス(RNAウイルス)
- 飛沫感染・接触感染。ラクダが宿主
- 2012年にアラビア半島で発生
- 2014年に検疫感染症に追加された
ラクダという一語がMERSの目印です。
SARS(重症急性呼吸器症候群)
- SARSコロナウイルス(RNAウイルス)
- 飛沫感染・接触感染
- 2002年に中国・広東省で発生
- インフルエンザ様の前駆症状(発熱・咳)から呼吸困難、乾性の咳へ
- 治療は対症療法のみ
SARSは、新型インフルエンザ等感染症・指定感染症・新感染症の違いで見たとおり、新感染症 → 一類 → 二類と移動してきた経緯があります。現在は二類です。
2つの区別は、MERS=中東・ラクダ・2012年、SARS=中国・2002年で足ります。
鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)
二類に入るのはH5N1とH7N9の2つの型だけです。
第98回・問21(必須)では「平成23年以前に国内においてヒトでの報告例がない感染症はどれか」が問われ、正解は鳥インフルエンザ(H5N1)でした。コレラ、レジオネラ症、細菌性赤痢、つつが虫病はいずれも国内での報告例があります。日本では鳥インフルエンザのヒトでの発症例がないという事実が、そのまま問われた形です。
それ以外の亜型の鳥インフルエンザは四類なので、詳しくは四類感染症は動物・昆虫が媒介|蚊・ダニ媒介疾患を一覧でで扱います。
まとめ
- 二類は6疾患(厚生労働省の一覧ではH5N1とH7N9を分けて7疾病)。語呂は「日暮里に布陣とり、まだ結果出さず」。措置は必要に応じて入院
- 鳥インフルエンザはH5N1とH7N9だけが二類、それ以外の亜型は四類
- 結核は空気感染(飛沫核感染)するのでN95マスクが必要。空気感染する主な感染症は結核・麻疹・水痘
- 結核の罹患率・死亡率は低下傾向だが欧米より高い。HIVの蔓延を背景に再興感染症とされる
- 結核の治療は多剤併用療法とDOTS(直接服薬確認療法)。途中でやめると耐性菌(イソニアジド・リファンピシン)ができるため
- ポリオは経口感染で、麻痺が出るのは0.1%程度。現在の定期接種は不活化ポリオワクチン(IPV)
- ジフテリアは飛沫感染で偽膜形成と毒素によるタンパク合成阻害。治療に抗毒素血清を使う
- MERS=中東・ラクダ・2012年、SARS=中国広東省・2002年・対症療法のみ
次は四類感染症は動物・昆虫が媒介|蚊・ダニ媒介疾患を一覧でを読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。