感染症の予防

新型インフルエンザ等感染症・指定感染症・新感染症の違い【薬剤師国家試験】

感染症類型のマインドマップ
感染症類型のマインドマップ

一類〜五類のほかに、感染症法にはもう3つの枠があります。新型インフルエンザ等感染症・指定感染症・新感染症です。

この3つは、一類〜五類という決まった棚に収まらない感染症が出てきたときの受け皿です。だから「どれがどの疾患か」を暗記するより、どういう状況で使われる枠なのかを理解するほうが早い。SARSと新型コロナウイルス感染症という2つの実例を追いかければ、3つの違いは自然に見えてきます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

3つの枠を一言で分ける

枠 どういうときに使うか 鍵になる言葉
新型インフルエンザ等感染症 インフルエンザが新型化・再興したとき インフルエンザ限定
指定感染症 既知の感染症だが、一〜三類に準じた対応が必要になったとき 既知・期間限定
新感染症 未知の感染症で、危険性が極めて高いとき 未知

分け方の軸は2つだけです。知られている病気か、未知の病気か。そしてインフルエンザか、そうでないか。

  • インフルエンザ系 → 新型インフルエンザ等感染症
  • インフルエンザ以外で、既知 → 指定感染症
  • インフルエンザ以外で、未知 → 新感染症

新型インフルエンザ等感染症

名前に「等」が付いているのがポイントで、この枠には新型インフルエンザと再興型インフルエンザの両方が入ります。

措置は必要に応じて入院、かつ飲食物の取扱業務への就業制限。つまり二類レベルの入院措置に三類レベルの就業制限を足した形で、実質的にかなり強い枠です。

新型インフルエンザ

新たにヒトからヒトへ伝染する能力を有することとなったインフルエンザウイルスによる感染症です。

危険なのは次の流れだからです。

  1. 動物(とくに鳥類)のインフルエンザがヒトに感染する
  2. ヒトの体内で増殖できるように変化する
  3. ヒトからヒトへ簡単に感染するようになる
  4. ほとんどの人が免疫を持っていないため、急速なパンデミックを起こす

4番目が本質です。誰も免疫を持っていないから、一気に広がる。だから「新型」という一語に、これだけ重い措置がぶら下がっています。

再興型インフルエンザ

かつて世界的規模で流行したインフルエンザであって、その後流行することなく長期間が経過しているものが再び流行したものです。

例として挙げられるのがアジアかぜです。1957年に流行したとき、50歳以上の人には抗体を持っている人がいた。ということは、その人たちが子どもだった1900年前後に同じ型の流行があったはずで、それが再び現れた——という推定が成り立ちます。

抗体を持っている年齢層から、過去の流行を逆算する。この考え方自体が疫学的で面白いところです。

なお、感染症の単元で出てくる「再興感染症」(WHOの概念)と、ここでの「再興型インフルエンザ」(感染症法の用語)は別物です。名前が似ているので注意してください。

指定感染症:既知の感染症の、期間限定の受け皿

指定感染症は、既知の感染症で一類〜三類には入っていないが、一類〜三類に準じた対応が必要になったものを、政令で指定する枠です。

ここで重要なのが期間です。

原則1年間。その後、1回に限り延長可能(最長2年)。

なぜ期間が区切られているかというと、指定感染症はあくまで暫定措置だからです。その間に実態が分かってきたら、正式に類型へ組み込むか、指定を外すかを決める。腰を据えた分類ではなく、つなぎという位置づけです。

実例が新型コロナウイルス感染症です。2020年に中国・武漢で発生した新型肺炎は、まず指定感染症に指定されました。これによって法的な裏付けができ、患者の協力ベースだった対応が、入院措置や公費による医療提供という形で行えるようになりました。

新感染症:未知で、危険性が極めて高い

新感染症は、ヒトからヒトへ伝染する未知の感染症で、伝染力と重篤度から危険性が極めて高いものです。

指定感染症との違いは既知か未知かの一点。ここだけ外さなければ迷いません。

SARSで3つの枠の動きを追う

SARSは、この制度の中を移動していった代表例です。

  1. 2003年:発生当時は正体が分からず、新感染症に指定された
  2. その1年後:実態が分かり、一類感染症に位置づけられた
  3. 現在:危険度の評価が定まり、二類感染症になっている

未知だから新感染症 → 正体が分かったので類型へ → 評価が落ち着いて二類。この移動を1本の線として覚えておくと、「SARSは何類か」と聞かれたときに現在の答え(二類)を自信を持って選べます。

同じように新型コロナウイルス感染症も、指定感染症 → 新型インフルエンザ等感染症 → 2023年5月8日から五類と移動しました。五類になったことで、検疫感染症からも外れています。

この分野は法改正で中身が動きます。個別の疾患が今どの類型にいるかを暗記するより、枠の定義と、動いた実例の筋道を押さえるほうが、結果的に長持ちします。

まとめ

  • 一類〜五類に収まらない感染症の受け皿が、新型インフルエンザ等感染症・指定感染症・新感染症の3つ
  • 新型インフルエンザ等感染症はインフルエンザ限定の枠。新型インフルエンザ(新たにヒト→ヒト伝染能を獲得)と再興型インフルエンザ(過去に大流行し長期間途絶えた後に再流行)が入る。措置は入院+飲食物取扱業務への就業制限
  • 指定感染症は既知の感染症の暫定的な受け皿。原則1年、1回に限り延長可能
  • 新感染症は未知でヒト→ヒト伝染があり、危険性が極めて高いもの
  • 分け方は「インフルエンザか否か」と「既知か未知か」の2軸だけ
  • SARSは 新感染症 → 一類 → 二類 と移動した。新型コロナは 指定感染症 → 新型インフルエンザ等感染症 → 五類(2023年5月8日)

次は一類感染症と三類感染症|最も危険な7つと、全部経口感染の4つを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

-感染症の予防

© 2026 マインドマップ薬学 Powered by AFFINGER5