
感染症の単元の中心にある記事です。ここを固めると、この先の各論(一類は何、二類は何……)がすべて枝葉になります。
大事なのは、類型は疾患名を並べた名簿ではなく、「どんな措置をとるか」で切られているということです。危険だから入院させる、就業を制限する、情報を集めるだけにする——措置が先にあって、その基準に当てはまる疾患が振り分けられている。この順番で理解すると、初めて見る疾患でも類型の見当がつくようになります。
語呂は一類・二類・三類の3つ。四類と五類は数が多すぎるので語呂ではなく括り方で覚えます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
五つの類型を措置で並べる
| 類型 | 危険度 | 主な措置 | 届出 |
|---|---|---|---|
| 一類 | 極めて高い | 原則入院 | 全数把握 |
| 二類 | 高い | 必要に応じて入院 | 全数把握 |
| 三類 | 高くないが集団感染のおそれ | 就業制限(入院なし) | 全数把握 |
| 四類 | 動物・飲食物などを介して感染 | 消毒などの対物措置(人への措置なし) | 全数把握 |
| 五類 | — | 発生動向の調査と情報提供 | 全数把握 or 定点把握 |
まずこの表の措置の列を上から読んでください。入院 → 入院 → 就業制限 → 物への措置 → 情報提供だけ、とだんだん弱くなっていくのがわかります。
就業制限がかかるのは一類・二類・三類、そして新型インフルエンザ等感染症です。入院勧告がかかるのは一類・二類と新型インフルエンザ等感染症・新感染症。三類は就業制限はあるが入院はない——ここが一類・二類との分かれ目です。
全数把握と定点把握
一類〜四類は、診断したら全例を届け出る全数把握です。五類だけが2つに分かれます。
| 五類の届出 | 対象 |
|---|---|
| 全数把握 | 麻疹、風疹、AIDS、B型肝炎、C型肝炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、梅毒など |
| 定点把握 | インフルエンザ、手足口病、ヘルパンギーナ、水痘など |
定点把握は、患者数が多すぎて全数を数えるのが現実的でないものが対象です。あらかじめ指定した医療機関(定点)だけが報告し、そこから全体を推計します。
梅毒が五類の全数把握である点は、第107回・問123でそのまま正しい記述として出題されています。梅毒は近年急増しているため、動向を正確に把握する必要があるからです。
一類感染症:原則入院の7つ

エバラ 天然 クリーミーペースト 鍋 一つまるごともらった
- エバラ → エボラ出血熱
- 天然 → 天然痘(痘瘡)
- クリーミー → クリミア・コンゴ出血熱
- ペースト → ペスト
- 鍋 → 南米出血熱
- 一つ → 一類
- まるごと → マールブルグ病
- もらった → ラッサ熱
7疾患すべてが原則入院。そして先ほど触れたとおり、一類は丸ごと全部が検疫感染症でもあります。
二類感染症:必要に応じて入院の6つ

日暮里に布陣とり、まだ結果出さず
- 日(に) → 二類感染症
- 暮里(ぽり) → ポリオ(急性灰白髄炎)
- 布陣(ふじん) → ジフテリア
- とり → 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)
- ま → MERS(中東呼吸器症候群)
- 結果(けっか) → 結核
- 出さず(ださーず) → SARS(重症急性呼吸器症候群)
鳥インフルエンザはH5N1とH7N9だけが二類で、それ以外の亜型は四類です。この線引きはよく問われます。なお、語呂では鳥インフルエンザを1つにまとめて6つと数えますが、厚生労働省の感染症分類の一覧ではH5N1とH7N9を分けて7疾病と数えます。
第99回・問19(必須)では「感染症法において二類感染症に指定されているのはどれか」が問われ、正解は結核。誤り選択肢は風しん(五類)、ペスト(一類)、コレラ(三類)、細菌性赤痢(三類)でした。
三類感染症:就業制限、そして全部が経口感染

赤い チ ○ コ
- 赤い → 細菌性赤痢
- チ → 腸チフス・パラチフス
- ○(まる) → O157(腸管出血性大腸菌感染症)
- コ → コレラ
三類でいちばん大事なのは、4つとも経口感染、つまり全部が食中毒だということです。だから調理や飲食物の取り扱いに関わる業務に就いている人がかかると集団感染につながる。そのために就業制限がある、という筋が通っています。危険度が高いから制限するのではなく、広げる力が強いから制限するのが三類です。
第105回・問19(必須)の「消毒等の対物措置が必要とされる感染症」の答えが腸管出血性大腸菌感染症だったのも、この経口感染という性質から来ています。
なお、ITMZの図では腸管出血性大腸菌感染症が「腸管出血性大腸炎」と書かれていますが、感染症法上の正式な名称は腸管出血性大腸菌感染症です。記事では正しい名称で統一しています。
四類感染症:ヒトからヒトへはうつらない

四類の定義は、ヒトからヒトへの感染はないが、動物・飲食物・衣類・寝具などの物件を介してヒトに感染するもの。いわゆる人獣共通感染症が中心です。
第108回・問16(必須)は、この定義文をそのまま引用して「分類されるのはどれか」と聞いてきました。正解はデング熱。性器クラミジア感染症、マイコプラズマ肺炎、麻しん(いずれも五類)が誤り選択肢です。定義文が問題文になるパターンなので、「動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して」という言い回しには反応できるようにしておいてください。
疾患は数が多いので、媒介する生き物で括るのが定石です。詳しくは四類感染症は動物・昆虫が媒介|蚊・ダニ媒介疾患を一覧でで扱います。
五類感染症:情報を集めて提供する
五類は、国が発生状況を調査し、国民や医療機関に情報を提供することが目的の類型です。ヒトからヒトへの感染はあるものの、入院勧告や就業制限といった強い措置はとられません。
新型コロナウイルス感染症が2023年5月8日に五類へ移行したのも、この枠組みの話です。
五類は疾患数が多いため、この先の3本に分けて扱います。
類型を当てるときの考え方
疾患名だけ出されて類型を答える問題では、次の順で考えると外しにくくなります。
- 語呂の7つ(一類)・6つ(二類)・4つ(三類)に入っているか — 入っていれば確定
- ヒトからヒトへうつるか — うつらず動物や虫が介在するなら四類
- それ以外は五類
一類・二類・三類は、語呂で数えると合わせて17疾患しかありません(厚生労働省の一覧では、鳥インフルエンザのH5N1とH7N9、腸チフスとパラチフスを別々に数えるので19疾病)。この17個だけ語呂で確実に押さえ、残りは「四類か五類か」を感染経路で判断する。これが最短ルートです。
まとめ
- 類型は措置の強さで切られている。一類=原則入院、二類=必要に応じて入院、三類=就業制限、四類=対物措置、五類=情報提供
- 就業制限は一類〜三類と新型インフルエンザ等感染症。三類に入院はない
- 一類〜四類は全数把握。五類だけ全数把握と定点把握に分かれる(梅毒・麻疹・風疹・AIDS・肝炎・CJDは全数、インフルエンザ・手足口病は定点)
- 一類の語呂は「エバラ天然クリーミーペースト鍋一つまるごともらった」(エボラ・天然痘・クリミアコンゴ・ペスト・南米出血熱・マールブルグ・ラッサ)
- 二類の語呂は「日暮里に布陣とり、まだ結果出さず」(ポリオ・ジフテリア・鳥インフルH5N1/H7N9・MERS・結核・SARS)
- 三類の語呂は「赤いチ○コ」(細菌性赤痢・腸チフス/パラチフス・O157・コレラ)。4つとも経口感染=食中毒
- 四類はヒト→ヒト感染がなく、動物や物件を介する。定義文がそのまま問題文になる
- 疾患から類型を当てるときは、語呂の17疾患→感染経路→残りは五類の順で考える
次は新型インフルエンザ等感染症・指定感染症・新感染症の違いを読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。