
四類感染症は疾患数が多く、名前を並べて覚えようとすると必ず溢れます。媒介する生き物で括るのが正解です。
四類の定義は「ヒトからヒトへの感染はないが、動物・飲食物・衣類・寝具その他の物件を介してヒトに感染するもの」。つまり間に必ず何かが挟まっている。その「何か」が蚊なのか、ダニなのか、犬なのか、食べ物なのか——この分け方で並べ直すと、一気に扱いやすくなります。
国試でも「蚊が媒介するのはどれか」「ダニが媒介するのはどれか」という聞き方が定番です。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
四類の定義と措置
四類感染症は、ヒト⇔ヒトの感染はないけれども、動物などその他のものからヒトに感染する感染症です。いわゆる人獣共通感染症が中心になります。
措置は消毒などの対物措置で、入院勧告や就業制限といった人への措置はありません。届出は全数把握です。
第110回・問230では「感染症法においてSFTSが含まれる四類感染症は、全数報告対象とされている」が正しい記述として出題されています。「四類は人への措置がないから届出も緩いだろう」と考えると外します。四類も全数把握です。
第108回・問16(必須)は定義文そのものが問題になった例です。
「動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症」に分類されるのはどれか
正解はデング熱。この言い回しを見たら四類だと反応できるようにしておいてください。
媒介する生き物で括る
| 媒介 | 疾患 |
|---|---|
| 蚊 | デング熱、ジカ熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱、日本脳炎、マラリア |
| ダニ | 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、つつが虫病(リケッチア) |
| 犬などの哺乳類 | 狂犬病 |
| 鳥 | 鳥インフルエンザ(H5N1・H7N9以外) |
| キツネ・犬(経口) | エキノコックス症 |
| 飲食物(経口) | A型肝炎、E型肝炎 |
| その他の細菌 | 炭疽、ボツリヌス症、レジオネラ症 など |
この表の左の列だけを先に覚えてください。疾患名を見たら「何が運んでくるか」を思い出す。それが四類の解き方です。
蚊が媒介する6疾患
蚊が媒介するグループは、フラビウイルス科が多いのも特徴です。
デング熱はフラビウイルス科のデングウイルス。ヒトスジシマカが媒介し、一過性の熱性疾患と麻疹に似た皮膚発疹が出ます。検疫感染症の一つです。
ジカ熱は症状としてはデング熱の軽い版ですが、妊婦が罹ると小頭症の子どもが生まれるリスクがあります。これが最大の特徴で、母子保健の単元ともつながります。こちらも検疫感染症です。
チクングニア熱も蚊が媒介し、検疫感染症です。デング熱・ジカ熱と合わせて、蚊媒介の3疾患はすべて検疫感染症と覚えると効率的です。
ウエストナイル熱はフラビウイルス科のウエストナイルウイルス。80%が不顕性感染で、発症してもインフルエンザ様の症状です。
日本脳炎もフラビウイルス科で、蚊が媒介します。痙攣などの中枢症状が特徴。不活化ワクチンの予防接種で激減し、現在は毎年5人程度です。日本脳炎ワクチンは定期接種(A類疾病)に入っています。
マラリアはマラリア原虫による疾患で、ハマダラカが媒介します。
- 症状は、原虫が赤血球内で増殖し、赤血球が破壊されるときに毒素が血中に放出されることで起こる。繰り返す発熱、悪寒、筋肉痛など
- 日本の感染者は海外からの帰国者で年間50人程度。日本にハマダラカはいません
- 世界的には年間2億人が罹患し、60万人が死亡
- 検疫感染症であり、再興感染症でもある
第104回・問18(必須)の「原虫を病原体とする再興感染症はどれか」の答えがマラリアでした。原虫・再興・検疫・四類と属性が多いので、まとめて覚えてしまってください。
ダニが媒介する2疾患
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はSFTSウイルスによる疾患で、マダニに噛まれて発症します。発熱と消化器症状が出て、治療は対症療法のみ、ワクチンもありません。
第110回・問230-231では、登山に行く親子への説明という設定でSFTSが出題されました。正しい記述は「四類感染症は全数報告対象」と「ダニが媒介する」の2つ。誤り選択肢は「原虫によって引き起こされる」「ワクチンがある」「感染者との接触や血液を介した感染のおそれはない」でした。
つつが虫病はリケッチアによる疾患です。ツツガムシ(ダニの一種)が持っているリケッチアが、刺されることで体内に入ります。発疹・発熱、そして刺し口が三徴で、草むらでの感染が多い。年間数百人です(2019〜2024年は350〜550人ほど。2024年は354人)。
四類の細菌性はリケッチアが代表、と押さえておくと整理しやすくなります。
狂犬病:発症したら致死率100%
狂犬病ウイルスによる疾患で、感染した犬など(動物全般)の咬傷から唾液を介して感染します。
発症すると致死率はほぼ100%。ただし、ここから先が大事です。
- まず石鹸水でよく洗い、消毒する。これでほぼ防げる
- 潜伏期間が1ヶ月以上と長いため、咬まれた後からワクチンを接種しても発症を回避できる(曝露後接種)
- 流行地に行く場合は事前のワクチン接種が望ましい
「致死率100%なのに、洗って打てば助かる」という一見ちぐはぐな性質が、潜伏期間の長さで説明できます。ここは因果で覚えてください。
経口感染するA型肝炎とE型肝炎
肝炎ウイルスの中で、A型とE型だけが四類です。理由ははっきりしていて、この2つだけが経口感染だからです。B型・C型は血液や体液を介した感染で、五類になります。
A型肝炎はピコルナウイルス科のHAV。糞便で汚染された水などからの経口感染で、発熱・黄疸・肝肥大などが出ます。慢性化しないので予後良好、治療は対症療法です。
E型肝炎はHEVによる経口感染。汚染された水に加えて、イノシシ・シカなどの野生動物の肉、ブタの生レバーが感染源になります。悪心・嘔吐・腹痛を伴う急性肝炎ですが、自然治癒します。
A型は水、E型はジビエと生レバー。この対比で覚えると混ざりません。
その他:鳥インフルエンザとエキノコックス
鳥インフルエンザは、H5N1・H7N9以外の亜型が四類です(この2つは二類かつ検疫感染症)。
鳥に感染性を示すA型インフルエンザウイルスがヒトへ感染することがあり、これまで発症した人はいずれも鳥との濃厚接触がありました。日本での発症例はありません。
問題は新型インフルエンザにつながる可能性です。季節性インフルエンザと鳥インフルエンザに同時にかかると、体内でウイルスの遺伝子変異が起こり、鳥インフルエンザがヒトへ感染しやすくなる——これが新型インフルエンザの発生機序です。
エキノコックス症は、キツネと犬に寄生する条虫(寄生虫)によるものです。虫卵が口に入ると腸で孵化し、肝臓に寄生して慢性の肝疾患を起こします。経口感染です。
まとめ
- 四類は「ヒト⇔ヒト感染はないが、動物・飲食物・物件を介して感染する」もの。措置は対物措置のみだが届出は全数把握
- 疾患は媒介する生き物で括るのがコツ
- 蚊:デング熱・ジカ熱・チクングニア熱・ウエストナイル熱・日本脳炎・マラリア。デング/ジカ/チクングニアは検疫感染症
- ジカ熱は妊婦が罹ると小頭症のリスク、マラリアはハマダラカ・原虫・再興感染症・検疫感染症
- ダニ:SFTS(マダニ)とつつが虫病(ツツガムシ、リケッチア、刺し口)
- 狂犬病は発症すると致死率ほぼ100%だが、潜伏期間が1ヶ月以上と長いため石鹸水で洗浄+曝露後ワクチンで防げる
- 肝炎はA型とE型が四類(経口感染)、B型とC型は五類(血液・体液)。A型は汚染された水、E型はジビエ・生レバー
- 鳥インフルエンザはH5N1・H7N9のみ二類、それ以外は四類。同時感染による遺伝子変異が新型インフルエンザにつながる
次は五類感染症①|HIV/AIDS・B型肝炎・C型肝炎を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。