保健統計

患者調査と国民生活基礎調査の違い|受療率と有訴者率【薬剤師国家試験】

人口動態の変遷のマインドマップ
人口動態の変遷のマインドマップ

講義でも「似たような感じに捉えられることが多い」と言われている2つの調査です。患者調査と国民生活基礎調査。名前を見てもどちらがどちらか分かりません。

ですが、この2つはどこから見ているかがまったく違います。患者調査は医療機関から見ている。国民生活基礎調査は世帯(家庭)から見ている。 この一点さえ押さえれば、指標も、その指標の弱点も、全部そこから導けます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

2つの調査を1枚の表で

患者調査 国民生活基礎調査
どこから見る 医療機関から無作為抽出 世帯面から把握
周期 3年に1度 毎年(大規模調査は3年ごと)
主な指標 推計患者数、受療率 有訴者率、通院者率
拾えるもの 実際に医療機関にかかった人 本人が自覚している症状
弱点 医療機関に来ていない人は拾えない 自覚がない人は拾えない

「患者」調査だから医療機関、「生活」基礎調査だから世帯。名前と対応させて覚えると忘れません。

患者調査 ― 医療機関から見た「受療率」

患者調査は、医療機関から無作為抽出して、3年に1度行われます。

わかるのは推計患者数と受療率です。受療率とは、調査日に医療施設を受療した患者の数(推計)の割合のこと。ある1日を決めて、その日に病院・診療所にかかった人が人口のうちどれだけいたかを見る指標です。

入院と外来で顔ぶれが違う

受療率は入院と外来に分けて出されます。ここが出題ポイントです。

多い疾患
入院受療率 精神系、循環器系、がん
外来受療率 消化器系、循環器系、呼吸器系、筋骨格系(リウマチなど)

理屈で考えれば納得できます。入院は「長く病院にいる」病気が上位に来るので、統合失調症などの精神疾患や脳血管疾患が並びます。一方外来は「通い続ける」病気なので、歯科を含む消化器系や、高血圧などの循環器系、腰痛・関節症などの筋骨格系が上位になります。

入院といえば精神疾患――ここは意外に思う人が多いところですが、繰り返し問われます。

国民生活基礎調査 ― 世帯から見た「有訴者率」

国民生活基礎調査は、世帯面から把握します。代表的な指標が有訴者率です。

有訴者率とは、病気やけがで自覚症状がある人の割合です。「この病気を持っています」ではなく、「だるい」「腰が痛い」といった自覚症状を申告してもらう形です。

有訴者率の弱点をそのまま覚える

ここが国試で問われる急所です。有訴者率は本人の自覚に頼っているので、

  • がんの告知を受けていない人は入ってこない
  • 自覚症状のない高血圧・脂質異常症なども入ってこない
  • 逆に、受診していなくても「だるい」と感じていれば入ってくる

つまり実際の有病状況とはズレます。講義でも「不正確なのかもしれない」と言われているとおりで、この「不正確さ」こそが有訴者率の定義から出てくる性質です。

有訴者率で多いのは、男性では腰痛・肩こり、女性では肩こり・腰痛が上位に来ます。症状名であって病名ではないのがポイントです。

受療率と有訴者率を取り違えないために

2つの指標の違いを、1行でまとめておきます。

  • 受療率……医療機関にかかった人の割合(患者調査/客観的)
  • 有訴者率……自覚症状がある人の割合(国民生活基礎調査/主観的)

選択肢で「有訴者率は患者調査で得られる」「受療率は国民生活基礎調査で得られる」と入れ替えてくるのが定番です。調査名と指標名をペアで覚えてください。

なお、国民生活基礎調査からは通院者率も出ます。こちらは「通院している人の割合」で、有訴者率と並んで出てきます。有訴者率より通院者率のほうが低くなるのが普通です(症状があっても通院していない人がいるため)。

国試ではこう問われる

この単元は単独で1問になることは多くありませんが、グラフや表の読み取り問題の土台として繰り返し使われます。

回 問われ方 ポイント
第100回・問235 糖尿病・悪性新生物・脳血管疾患・心疾患・高血圧症の総患者数の年次推移グラフから、糖尿病を選ぶ 出典は厚生労働省「患者調査」。総患者数は患者調査から出る
第109回・問123 「人口統計は、人口動態統計と疾病統計に大別される」 誤り。人口統計は静態と動態に大別。疾病統計はそれとは別の枠

第109回の選択肢は、疾病統計(患者調査・国民生活基礎調査)を人口統計の中に押し込んでくるひっかけです。マインドマップでも、疾病統計は出生統計・死亡統計と並列の枝として描かれています。「人口統計の一部ではない」と位置で覚えておくと崩れません。

まとめ

  • 患者調査は医療機関から、3年に1度。指標は推計患者数と受療率
  • 受療率は調査日に医療施設を受療した患者の割合。入院は精神系・循環器系・がん、外来は消化器系・循環器系・呼吸器系・筋骨格系が多い
  • 国民生活基礎調査は世帯から、指標は有訴者率(と通院者率)
  • 有訴者率は自覚症状がある人の割合。がんの告知を受けていない人は入らないので、実態とはズレる
  • 調査名と指標名を入れ替えてくる選択肢が定番

次は出生率・合計特殊出生率・総再生産率・純再生産率の違いを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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