
「出生率」「合計特殊出生率」「総再生産率」「純再生産率」。4つとも似た名前で、式も似ていて、覚えようとすると必ず混ざります。
でもこの4つには、きれいな順番があります。「全体をざっくり見る」→「女性1人あたりに絞る」→「産まれる子を女児だけに絞る」→「母親の生存率まで考える」。だんだん条件を厳しくしていく流れです。この順番で読めば、式を丸暗記しなくても書き出せるようになります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
まず出生率 ― 人口全体で割るだけ

出生率 = 一年間の出生数 ÷ その年の人口 × 1000
人口千人あたり何人生まれたかを表します。分母がその年の人口全体、つまり男性も高齢者も子どもも全部入っている、いちばん大ざっぱな指標です。
令和7(2025)年(概数)は、出生数 671,236人、出生率 5.6(人口千対)でした。
ここで一度立ち止まってください。出生率の分母は人口全体です。ということは、高齢者が増えるだけで出生率は下がります。実際には1人の女性が産む子どもの数が変わっていなくても、人口構成が変われば動いてしまう。だから、次の指標が必要になります。
再生産率という考え方
再生産率とは、女性が生涯に産む子どもの数のことです。ここから先の3つはすべて「女性1人あたり」の話になります。
まず、この図のイメージを頭に入れてください。

父と母から、男児1人・女児2人が生まれたとします。このとき、
- 合計特殊出生率が数えるのは、男児 + 女児2人 = 3人(全部)
- 総再生産率が数えるのは、女児2人だけ
総再生産率は女児しか数えない。 これが2つを分ける唯一のポイントです。なぜ女児だけなのかというと、次の世代の母親になるのは女児だけだからです。
そして、この3つがどう積み上がるのかを4コマで示したのが次の図です。

- 今の女性は一生に何人子どもを産むのか知りたい
- 各年齢の女性が今年何人産んだかを合計すれば、擬似的に一生分がわかる → 合計特殊出生率
- でも結局産むのは女性だから、1人の女性が一生に産む女児数が知りたい → 総再生産率
- 各年齢で足し合わせたが、その年齢まで生き残った女性の合計値だから、本当は生存率も考えないといけない → 純再生産率
2番の考え方は、生命表とまったく同じ発想です。実在する1人を一生追いかけるかわりに、今年の各年齢の値を足し合わせて仮想の一生を作る。 生命表を理解していれば、ここはすんなり入ります。
3つの式を並べる

| 指標 | 式 | わかること | 目安 |
|---|---|---|---|
| 合計特殊出生率(粗再生産率) | 母親の年齢別男女児出生数 ÷ 年齢別女子人口 | 1人の女子が一生に産む子どもの数 | 2.1以上で人口増加 |
| 総再生産率 | 母親の年齢別女児出生数 ÷ 年齢別女子人口 | 1人の女子が一生に産む女児の数 | 1.0以上で人口増加 |
| 純再生産率 | 総再生産率 × 母親の年齢別生存率 | 生存率まで考えた女児の数 | 1.0以上で人口増加 |
※分母の年齢別女子人口は15〜49歳(再生産年齢)です。ここも問われます。
3つの式を見比べると、違うのは分子だけです。合計特殊出生率は男女児、総再生産率は女児のみ。そして純再生産率は、総再生産率に生存率を掛けただけ。式を4つ覚えるのではなく、「分子を女児に絞る」「生存率を掛ける」という2つの操作を覚えるほうが確実です。
大小関係は必ず「合計特殊 > 総再生産 > 純再生産」
生まれる子のうち女児はおよそ半分なので、総再生産率は合計特殊出生率のおよそ半分になります。さらに純再生産率は、それに1未満の生存率を掛けるので、総再生産率より少し小さくなります。
したがって、合計特殊出生率 > 総再生産率 > 純再生産率。この順番は例外なく成立します。大小を問う問題はこれだけで解けます。
現状(令和7年・2025年、概数)
合計特殊出生率は1.14(令和7年・概数)です。人口を維持するのに必要な水準(人口置換水準)は約2.07なので、大きく下回っています。
ITMZ・講義の数値について:マインドマップには「現在1.43」「合計特殊出生率:1.3」と書かれていますが、これは作成当時の値です。記事では令和7年の概数(1.14)を採用しています。 国家試験では小数第2位まで問われることはまずなく、「1.1〜1.2程度」「2.1を下回っている」という水準感で十分です。
国試ではこう問われる
| 回 | 問われ方 | ポイント |
|---|---|---|
| 第104回・問122 | 「平成28年の合計特殊出生率」と「平成28年の総再生産率」の大小 | 合計特殊出生率のほうが大きい(総再生産率はおよそ半分) |
| 第110回・問16 | 人口千対のグラフが何の指標かを選ぶ(出生率/合計特殊出生率/総再生産率/粗死亡率/年齢調整死亡率) | 「人口千対」という単位がヒント。合計特殊出生率・総再生産率は「人」で、率ではあるが千対ではない |
| 第100回・問124 | 出生・死亡に関する人口動態指標AとBの年次推移 | 「Aの値は総人口と出生数のみから求められる」=出生率の性質。合計特殊出生率なら年齢別女子人口が必要 |
| 第101回・問126ほか | 合計特殊出生率の定義 | 分母は15〜49歳の女子人口 |
第110回・問16の考え方だけ補足します。単位が「人口千対」と書いてあるグラフは、出生率・粗死亡率のように人口全体で割る指標です。合計特殊出生率(1.15人)や総再生産率(0.5〜0.6人)は、値が1前後になるので、15〜0の目盛りのグラフには合いません。目盛りの桁を見るだけで候補を絞れます。
まとめ
- 出生率 = 一年間の出生数 ÷ その年の人口 × 1000。分母が人口全体なので、人口構成の影響を受ける
- 合計特殊出生率は分子が男女児、総再生産率は分子が女児のみ。分母はどちらも15〜49歳の女子人口
- 純再生産率 = 総再生産率 × 母親の生存率
- 大小は必ず合計特殊出生率 > 総再生産率 > 純再生産率
- 増加の目安は合計特殊2.1以上/総再生産1.0以上/純再生産1.0以上
- 令和7年(概数)の合計特殊出生率は1.14、出生数は約67.1万人
次は粗死亡率・年齢調整死亡率・PMIの違い|年齢調整が必要な理由を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
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