
「平均寿命」と「平均余命」。日常語としてはほとんど同じ意味に聞こえますが、国家試験ではここを取り違えさせる選択肢が繰り返し出ています。
いちばん多いひっかけが、「60歳の人の平均余命は、平均寿命から60を引けば出る」というものです。これは誤りです。なぜ誤りなのかを、グラフ1枚で理解してしまいましょう。ここが腑に落ちると、この単元はもう迷いません。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
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生命表とは、10万人がどう減っていくかの予測表
生命表は、ある時点の死亡状況が将来もそのまま続いたとしたら、10万人の集団がどう減っていくかを計算したものです。

縦軸が生存数、出発点が10万人。横軸が年齢です。若いうちはほとんど減らず、60代あたりからカーブが下がり始め、80代で一気に落ちる。この曲線が生命表の本体です。
生命表は男女・年齢別死亡率と年齢別人口から作られます。年齢別人口は国勢調査から来ているので、「国勢調査の結果は生命表の作成に用いられる」という記述は正しい、ということになります。
なお生命表には、毎年作られる簡易生命表と、国勢調査の確定数を使って5年ごとに作られる完全生命表があります。ニュースで「平均寿命が◯年になりました」と報じられるのは簡易生命表のほうです。
平均寿命 ― 0歳児の平均余命
平均寿命とは、その年に生まれた0歳児が平均で何年生きられるかの予測値です。言い換えると、平均寿命 = 0歳の平均余命。この言い換えを覚えておくと、あとの話が全部つながります。
求め方は、曲線の下の面積を10万で割るというものです。グラフでいうと、①の面積と②の面積が等しくなる年齢が平均寿命になります。図の吹き出しにもそう書かれています。
令和7(2025)年の簡易生命表では、男性81.35年、女性87.33年です。
寿命中位数という、もうひとつの指標
同じグラフに寿命中位数も描かれています。これは生存数がちょうど半分(5万人)になる年齢のことです。
そして図が示しているとおり、我が国は「平均寿命 < 寿命中位数」です。若くして亡くなる人が平均を引き下げるぶん、真ん中の人(中位数)のほうが長生きになります。この大小関係はそのまま出題されうるので、平均寿命のほうが小さいと押さえてください。
平均寿命が延びた理由
日本の平均寿命は戦後に急激に延びました。その理由は2つです。
- 幼少期の感染性疾患による死亡の減少
- 20代の結核による死亡の減少
どちらも若い年齢での死亡が減ったという話です。ここが大事で、若い年齢の死亡が減るほど平均寿命は大きく延びます。90歳の人の死亡が1年遅れても平均寿命はほとんど動きませんが、0歳児の死亡が減ると平均寿命は大きく動く。この感覚を持っておくと、グラフ問題で迷いません。
平均余命 ― ある年齢の人が、あと何年生きるか
平均余命は、ある年齢の人が平均であと何年生きられるかです。
求め方は、その年齢から右側の面積の合計を、その年齢の生存人数で割るというものです。たとえば60歳の平均余命なら、60歳より右側の面積を、60歳時点で生きている人数で割ります。
なぜ「平均寿命 − 年齢」では出ないのか
ここが国試の急所です。たとえば平均寿命が81年だとして、「60歳の平均余命 = 81 − 60 = 21年」としたくなります。これは誤りです。
理由はシンプルで、60歳まで生き延びた人は、すでに「若くして亡くなるリスク」を通過してしまっているからです。0歳の集団には、事故や病気で若くして亡くなる人も含まれています。その人たちが平均寿命を引き下げている。ところが60歳の人はそこを生き残った人だけなので、残りの寿命は単純な引き算より長くなります。
実際、日本の60歳の平均余命は「平均寿命−60」より数年長くなります。「平均余命は、平均寿命から年齢を引いて求める」という選択肢は誤り――これだけは確実に覚えて帰ってください。
国試ではこう問われる
| 回 | 問われ方 | ポイント |
|---|---|---|
| 第97回・問125 | 「ある年齢における平均余命は、その年の平均寿命から年齢を差し引くことで算出される」 | 誤り。定番のひっかけ |
| 第98回・問125 | 「(国勢調査の)結果は、生命表の作成に用いられる」 | 正しい |
| 第100回・問125 | 1947年から1960年にかけての平均寿命の著しい延伸の主な原因 | 正答は2つ。0〜4歳の感染性疾患と20歳代の結核による死亡率の低下 |
| 第104回・問122 | 「平成28年の健康寿命」と「平成28年の0歳平均余命」の大小 | 0歳平均余命(=平均寿命)のほうが大きい。健康寿命は平均寿命より約9〜12年短い |
第104回で出てきた健康寿命も、ここで一緒に押さえておくと得です。健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」で、平均寿命より必ず短くなります。
まとめ
- 生命表は、今の死亡状況が続いたとして10万人がどう減るかを示した表。男女・年齢別死亡率と年齢別人口(国勢調査)から作る
- 平均寿命 = 0歳の平均余命。グラフの①と②の面積が等しくなる年齢
- 令和7年は男性81.35年、女性87.33年
- 我が国は「平均寿命 < 寿命中位数」
- 平均余命は「平均寿命 − 年齢」では求められない。これが最頻出のひっかけ
- 平均寿命が延びた理由は幼少期の感染性疾患の減少と20代の結核の減少。どちらも若年死亡の減少
次は患者調査と国民生活基礎調査の違い|受療率と有訴者率を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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