保健統計

死因統計の推移まとめ|死因順位・部位別がん・心疾患と脳血管疾患・年齢階級別【薬剤師国家試験】

死亡統計のマインドマップ
死亡統計のマインドマップ

講義でもはっきり言われています。「この中で一番出るのは、死因別にどれが増加傾向・減少傾向になっているのかを、バーッと予測して分かってるのが大事です」。

そのとおりで、この単元はグラフを読ませる問題として毎年のように出ます。そして丸暗記が効きません。曲線が上がっているか下がっているかは、なぜそう動いたのか(理由)とセットで覚えないと、本番で線を取り違えます。

この記事では、順位 → 全体の推移 → 部位別がん → 心疾患 → 脳血管疾患 → 年齢階級別の順で、理由つきで並べます。なお、この記事を読む前に粗死亡率と年齢調整死亡率の違いを押さえておいてください。どちらのグラフを見ているかで結論が逆になります。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

死因順位(令和7年・2025年、概数)

まず現在の順位です。

順位 死因 死亡数 全死亡に占める割合
1位 悪性新生物(がん) 378,812人 23.8%
2位 心疾患 220,447人 13.9%
3位 老衰 214,711人 13.5%
4位 脳血管疾患 100,355人 6.3%
5位 肺炎 84,013人 5.3%

がん・心疾患・老衰・脳血管疾患・肺炎。ここ数年、老衰が脳血管疾患・肺炎を抜いて3位に上がってきたのが大きな変化です。がんはおよそ4人に1人。この「4人に1人」は数字として覚えやすいので押さえてください。

全体の推移 ― 粗死亡率で見るか、年齢調整で見るか

死因別死亡率の推移(粗死亡率)
死因別死亡率の推移(粗死亡率)

これが粗死亡率のグラフです。読み取るべきことは4つあります。

  1. 結核が戦後に急激に低下している(グラフ左端から真下に落ちる黒い線)
  2. がんは一貫して上昇している
  3. 脳血管疾患は1960〜70年代をピークに低下し、がんに追い抜かれた
  4. 心疾患は1995年にガクッと落ちて、その後また上昇している

3つめと4つめが、そのまま設問になります。

死因別死亡率の推移(年齢調整死亡率)
死因別死亡率の推移(年齢調整死亡率)

そしてこちらが年齢調整死亡率のグラフ。結論が変わります。

粗死亡率では上がり続けているがんが、年齢調整死亡率では減少傾向です。図の吹き出しにあるとおり、「老人が増えているから粗死亡率は↑するが、年齢調整だと減少傾向」。

「がんの死亡率は増えているか減っているか」という問いには、どちらのグラフかを確認しないと答えられない。 これが最大のひっかけです。

  • 粗死亡率のがん … 増加(高齢化のため)
  • 年齢調整死亡率のがん … 減少(検診・治療の進歩)

1995年の段差は「様式変更」

粗死亡率のグラフでも年齢調整のグラフでも、1995年に心疾患がガクッと落ちています。これは治療法が変わったからではありません。

ITMZにはこう書かれています。「死亡の原因を昔は安易に心不全と書いていたが、それはやめる旨が注意事項に記載された」。 つまり、死亡診断書の様式が変更され、死因を安易に「心不全」と書かないよう通達された結果、統計上、心不全が一気に減ったのです。

新しい治療法ができたわけではなく、統計上の理由。 ここは理由込みで必ず問われます。

脳血管疾患が減った理由

同じく年齢調整のグラフの左側に、「塩分過多による高血圧→脳出血が原因だと疫学調査で判明。その後、一気に減少」とあります。

これは覚え方として非常に優秀です。疫学調査で原因(塩分)が特定され、減塩という対策が打たれて、死亡率が下がった。 保健統計と疫学がつながる、この科目でいちばん気持ちのいい例です。

部位別がん死亡の推移

男女別・部位別がんの年齢調整死亡率
男女別・部位別がんの年齢調整死亡率

このグラフは年齢調整死亡率です。男女で分けて見ます。

図は令和元年(2019年)ごろまでの流れを模式化したものです。国立がん研究センターの最新の集計でも、男性の胃・肺・肝臓の減少と女性の乳房の増加は続いています。一方で、近年は大腸が男女とも減少、女性の子宮は増加傾向です。国試では図のとおり「男性は胃の急減、女性は乳房の増加」を手がかりにすれば解けます。

男性

  • 1位は肺(気管・気管支及び肺)
  • 胃がんは「早期発見で一気に減少」
  • 肝がんも減少
  • 大腸はほぼ横ばい

男性で覚えるべきは「胃がんが減った」です。理由はピロリ菌の除菌と胃カメラ(内視鏡)による早期発見の普及。かつて日本人のがん死因1位は胃がんでしたが、そこから大きく下がりました。

女性

  • 1位は乳がんで、増加傾向
  • 大腸はほぼ横ばい
  • 子宮は減少

女性で覚えるべきは「乳がんが増えている」です。図の吹き出しに理由が書かれています。「若い女性に多いため年齢調整で↑」。

ここは少し噛み砕きます。年齢調整死亡率は、基準人口(高齢者の割合が今より低い)に合わせて計算し直すので、若い年齢で罹るがんの重みが相対的に大きくなります。乳がんは比較的若い世代でも発症するため、年齢調整すると上に出てくるのです。

注意:粗死亡数で見ると、女性のがん死亡1位は大腸がんです。年齢調整死亡率では乳がんが1位。ここも「どちらのグラフか」で答えが変わります。設問の軸ラベルを必ず確認してください。

心疾患と脳血管疾患の中身

心疾患の推移
心疾患の推移

心疾患は、死亡診断書の書式変更を境に内訳が入れ替わりました。心不全↓・虚血性(心筋梗塞等)↑。全体としては上昇傾向です。

脳血管疾患の推移
脳血管疾患の推移

脳血管疾患は、1950年ごろは脳内出血が多かったのが、生活の欧米化で脳梗塞が増え、脳内出血が減って逆転しました。現在は脳梗塞のほうが多い。全体としては減少傾向です。

「脳出血 → 脳梗塞」の逆転は、食生活の変化(塩分過多から脂質過多へ)という一本の物語で覚えられます。

年齢階級別の死因1位

年齢階級別の死因1位
年齢階級別の死因1位
年齢 死因1位
0〜4歳 先天性(先天奇形・変形及び染色体異常など)
5〜9歳 がん
10〜39歳 自殺
40〜89歳 がん
90歳以上 老衰

10代から30代の死因1位が自殺――ここが必ず問われます。若い世代はがんも心疾患もまだ少ないため、自殺が1位に立ちます。

自殺の原因順位

  • 1位 健康問題:60歳でピーク
  • 2位 経済・生活問題:50歳でピーク

健康問題が1位です。経済・生活問題だと思いがちですが、1位は健康問題。ピーク年齢とセットで覚えてください。令和7年の自殺統計でも、1位 健康問題・2位 経済・生活問題の順は変わっていません(ピーク年齢は講義で使ったグラフのものです)。

国試ではこう問われる

回 問われ方 ポイント
第103回・問126 全悪性新生物と部位別がんの年齢調整死亡率の年次推移(A〜Fが乳房・肺・胃・肝臓・大腸・子宮のいずれか) 年齢調整のグラフ。男性の胃の急減、女性の乳房の増加が手がかり
第106回・問122 女性の胃・子宮・大腸・肝臓・乳房の死亡数の推移表から、乳房を選ぶ こちらは実数
第108回・問122 胃・肝臓・膵臓・大腸・肺の粗死亡率の年次推移 「食塩の過剰摂取」=胃、「食生活の欧米化・肥満」=大腸、が手がかり
第100回・問125 1947〜1960年の平均寿命の著しい延伸の主因 0〜4歳の感染性疾患による死亡率の低下
第102回・問124 年齢調整死亡率の計算 前提として粗死亡率と年齢調整死亡率の理解が必要

第103回・第106回・第108回と、3回連続に近い頻度で部位別がんのグラフが出ています。対策としては、「軸ラベルが粗死亡率か年齢調整死亡率か」を最初に見ること。そのうえで、男性は胃の急減、女性は乳房の増加という2本の線を探せば、残りは消去法で埋まります。

まとめ

  • 死因順位はがん → 心疾患 → 老衰 → 脳血管疾患 → 肺炎。がんは全死亡の約24%(4人に1人)
  • 粗死亡率のがんは増加、年齢調整死亡率のがんは減少。どちらのグラフかを必ず確認する
  • 1995年の心疾患の急減は、死亡診断書の様式変更(「心不全」と書かないよう通達)。統計上の理由
  • 脳血管疾患が減ったのは、疫学調査で塩分過多→高血圧→脳出血という原因が判明したから
  • 部位別がん(年齢調整)は、男性1位が肺・胃が急減、女性1位が乳房・増加傾向。粗死亡数では女性1位は大腸
  • 心疾患は心不全↓・虚血性↑、脳血管疾患は脳出血↓・脳梗塞↑
  • 年齢階級別の死因1位は、0〜4歳 先天性/5〜9歳 がん/10〜39歳 自殺/40〜89歳 がん/90歳〜 老衰
  • 自殺の原因は1位 健康問題(60歳ピーク)、2位 経済・生活問題(50歳ピーク)

次は疫学とは|定義・歴史(スノーと高木)と三角形モデル・車輪モデルを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

-保健統計

© 2026 マインドマップ薬学 Powered by AFFINGER5