
死亡率は3種類あります。粗死亡率・年齢調整死亡率・PMI。この3つは、「何を打ち消したいか」が違うだけです。
粗死亡率は何も打ち消していない生の値。年齢調整死亡率は年齢構成の影響を打ち消した値。PMIは人口すらわからない国でも出せるようにした値。この3段構えで理解すると、「なぜ3つもあるのか」が腑に落ちます。
そして年齢調整死亡率は、この後の死因統計の推移を読むための前提でもあります。ここを飛ばすと、がんの死亡率のグラフが読めません。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
粗死亡率 ― いちばん素直な死亡率

死亡率(粗死亡率) = 死亡数 ÷ 人口 × 1000
単に「死亡率」といえばこれです。人口千人あたり何人亡くなったか。令和7(2025)年(概数)は13.3(人口千対)、死亡数は1,589,489人でした。
分母の人口は「年央人口」
細かいですが、ここは問われます。分母に使うのは年央人口です。年央=1年間の半ば。日本では10月1日現在の人口を使います。4月始まりで数えて真ん中が10月、と覚えると忘れません。
粗死亡率の弱点
粗死亡率の分母は人口全体です。ということは、高齢者が多い集団ほど死亡率が高く出ます。日本の粗死亡率が年々上がっているのは、医療が悪化したからではなく、人口が高齢化しているからです。
つまり粗死亡率では、年齢構成の異なる集団どうしを比べられません。ここが次の指標が必要になる理由です。
年齢調整死亡率 ― 年齢構成をそろえて比べる
年齢調整死亡率は、基準となる人口構成にそろえたうえで計算し直した死亡率です。
講義ではA村とB村の例で説明されています。A村とB村の年齢の人口比率を同じにして(モデル化して)考えましょう、と。そうすると、単に高齢者が多いから死亡者が多いのか、それとも何か別の原因があって死亡者が多いのかが見えてきます。
計算そのものは「基準集団の年齢構成を使って、観察集団の年齢階級別死亡率を重みづけし直す」というものです。国試では表を渡して計算させる形で出ます。
押さえる性質は2つだけ
- 年齢構成の影響を受けない → 異なる時代・異なる集団を比較できる
- 日本では年齢調整すると多くの死因が減少傾向になる → 高齢化の影響を取り除くため
とくに2つめが重要です。粗死亡率では増えているのに、年齢調整死亡率では減っている――がんがまさにこれです。詳しくは死因統計の推移で扱います。
PMI ― 人口がわからなくても出せる健康水準の指標

PMI(%) = 50歳以上死亡数 ÷ 全死亡数 × 100
PMIはProportional Mortality Indicatorの略で、50歳以上死亡割合のことです。
PMIの最大の長所
式を見てください。分母も分子も「死亡数」です。人口が入っていません。
これが決定的に重要です。死亡者数と死亡時の年齢さえわかれば計算できるので、人口統計が整備されていない発展途上国でも算出できます。だからPMIは国際的な健康水準の比較指標として使われます。
PMIは大きいほど良い
PMIが小さいということは、50歳未満で亡くなる人が多いということです。栄養不良や衛生環境の悪さで若くして亡くなる人が多い国ほど、PMIは小さくなります。
逆にPMIが大きい = ほとんどの人が50歳以上まで生きている = 健康水準が高い。PMI↑でGoodです。
3つを1枚で
| 指標 | 式 | 年齢構成の影響 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 粗死亡率 | 死亡数 ÷ 人口(年央人口) × 1000 | 受ける | いちばん素直。集団間の比較には不向き |
| 年齢調整死亡率 | 基準人口の年齢構成で調整 | 受けない | 時代・地域をまたいだ比較ができる |
| PMI | 50歳以上死亡数 ÷ 全死亡数 × 100 | ― | 人口がわからなくても出せる。↑でGood |
国試ではこう問われる
| 回 | 問われ方 | ポイント |
|---|---|---|
| 第97回・問125 | 「粗死亡率は年齢構成の影響を受けるため、年齢構成の異なる集団の比較には適していない」「PMIは人口や年齢構成がわからなくても算出できるため、国際的に健康水準を測る指標として利用される」 | どちらも正しい。ほぼ定義そのまま |
| 第102回・問124 | 基準集団と観察集団(1)(2)の年齢階級別人口・死亡数の表から、粗死亡率・老年人口割合・年齢調整死亡率を比較 | 実際に計算させるタイプ。年齢階級別死亡率×基準人口の重みづけ |
| 第110回・問16 | 人口千対のグラフが何の指標かを選ぶ | 選択肢に粗死亡率と年齢調整死亡率が並ぶ |
| 第104回・問122 | 「平成28年の粗死亡率」と「昭和60年の粗死亡率」の大小 | 高齢化により平成28年のほうが高い。年齢調整死亡率なら逆になる |
第102回の計算問題は、年齢階級ごとに「死亡率 × 基準集団の人口」を出して足し、基準集団の総人口で割るという手順です。やることは足し算と掛け算だけなので、手順さえ知っていれば確実に取れます。時間はかかるので、試験では後回しにする判断も込みで練習しておいてください。
まとめ
- 粗死亡率 = 死亡数 ÷ 人口 × 1000。分母は年央人口(10月1日)。年齢構成の影響を受ける
- 年齢調整死亡率は基準人口の年齢構成にそろえたもの。年齢構成の影響を受けないので比較に使える
- 日本では、粗死亡率は上昇・年齢調整死亡率は減少というねじれが起きる。原因は高齢化
- PMI = 50歳以上死亡数 ÷ 全死亡数 × 100。人口がわからなくても出せるので国際比較に使う。PMI↑でGood
次は母子保健の死亡統計|死産・周産期・新生児・乳児・妊産婦を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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