保健統計

人口静態・人口動態統計と人口指数|国勢調査と人口動態調査の違い【薬剤師国家試験】

保健統計のマインドマップ
保健統計のマインドマップ

衛生の一番最初に出てくる単元です。ここは言葉が似たものだらけで、しかも必須問題と理論問題の両方で毎年のように顔を出します。人口静態と人口動態、国勢調査と人口動態調査、老年人口指数と老年化指数――どれも一文字違いで意味が変わります。

ただ、覚え方は単純です。「ある一日を写真に撮ったもの」が静態、「一年間の出来事を録画したもの」が動態。 この対比だけ先に頭に入れてください。あとは、そこから何が計算できるかを枝分かれで追っていけば、この単元は落としません。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

人口の調査は「静態」と「動態」の2本立て

まず全体像です。人口統計は人口静態統計と人口動態統計の2つに分かれます。

人口静態統計 人口動態統計
代表的な調査 国勢調査 人口動態調査
イメージ ある一時点の写真 一年間の録画
実施 5年ごと(10月1日) 毎年集計
何を調べる 人口の規模・構造 出生・死亡・婚姻・離婚・死産の届出
わかること 確定人口、年齢3区分別人口 出生率、死亡率、人口増減率

国勢調査は人口静態統計、人口動態調査は人口動態統計。 この対応がそのまま選択肢のひっかけになります。「国勢調査は人口動態調査である」という文は誤りです。

人口静態統計 ― 国勢調査

国勢調査は、5年ごとに10月1日に実施されます。ここは数字がまとまって問われるので、まとめて押さえてください。

  • 大規模調査:西暦の末尾が0の年(2020年など)
  • 簡易調査:西暦の末尾が5の年(2025年など)

覚え方は「大きい(大規模)ほうがゼロ」。末尾0=大規模、末尾5=簡易です。

調査でわかるのは確定人口です。日本の総人口は約1億2,300万人(令和7年国勢調査の速報値。マインドマップの「1億2,500万人」は作成当時の値)。対象は、ふだん日本に住んでいる人全員で、外国人も含まれます。調査員が調査票を配布・回収し、対象者には正確に回答する義務があります。

そしてもう1つ大事なのが、国勢調査の結果は生命表の作成に使われるという点です。次の記事の生命表は、国勢調査の人口と死亡統計から作られます。

人口動態統計 ― 5つの届出を毎年集計する

人口動態統計は、出生・死亡・婚姻・離婚・死産の5つの届出を毎年集計したものです。この5つを覚えてください。

人口動態統計の全体像(引用:厚生労働省「人口動態統計」の資料より。数値は平成25年当時のもの)
人口動態統計の全体像(引用:厚生労働省「人口動態統計」の資料より。数値は平成25年当時のもの)

図の左側を見てください。人口から、婚姻・離婚で「配偶者あり/なし」が動き、出生で人が増え、死亡で人が減り、胎児は死産として数えられる。この5つの矢印がそのまま5つの届出です。なお図中の数値は平成25年当時のもので、最新の値は下の「現状」を見てください。

国勢調査でわかった人口に、この届出を毎年足し引きしていくことで、調査していない年の人口も推計できます。

人口増減率の中身

人口動態統計からは人口増減率が計算できます。ここは式の構造が問われます。

人口増減率=自然増減率+社会増減率
人口増減率=自然増減率+社会増減率

人口増減率 = 自然増減率 + 社会増減率 です。

  • 自然増減率(出生率 − 死亡率)……生まれた人と死んだ人の差
  • 社会増減率(移入率 − 移出率)……入ってきた人と出ていった人の差
自然増減率の計算式
自然増減率の計算式

自然増減率は、(出生数 − 死亡数) ÷ 人口 × 1000。分子を分けて考えれば、そのまま出生率 − 死亡率になります。式を丸暗記せず、「出生率から死亡率を引いただけ」と理解しておけば十分です。

現状(令和7年・2025年、概数)

  • 出生数 671,236人/出生率 5.6(人口千対)/合計特殊出生率 1.14
  • 死亡数 1,589,489人/死亡率 13.3(人口千対)
  • 自然増減 △918,253人(死亡が出生を約92万人上回る)
  • 婚姻 489,119組/離婚 179,068組

年齢3区分と4つの人口指数

ここからが計算問題の本丸です。まず人口を年齢で3つに分けます。

年齢3区分別人口
年齢3区分別人口
年齢区分 年齢 意味 割合(だいたい)
年少人口 0〜14歳 義務教育世代 1割
生産年齢人口 15〜64歳 労働世代 6割
老年人口 65歳以上 高齢者 3割

老年人口は65歳以上です。「75歳以上」としてくる選択肢は誤りなので、ここは即答できるようにしてください。割合は小数第1位まで毎年変わるので、1割・6割・3割でかまいません(高齢化率は2026年9月15日現在の推計で29.6%)。

4つの指数を、分母で覚える

人口指数の計算式
人口指数の計算式
指数 式 わかること
年少人口指数 年少人口 ÷ 生産年齢人口 × 100 働く世代が子どもを何人支えているか
老年人口指数 老年人口 ÷ 生産年齢人口 × 100 働く世代が高齢者を何人支えているか
従属人口指数 (年少 + 老年) ÷ 生産年齢人口 × 100 支えられる人 ÷ 支える人
老年化指数 老年人口 ÷ 年少人口 × 100 高齢化のスピード

コツは分母です。上の3つは分母が生産年齢人口、老年化指数だけ分母が年少人口。ここさえ区別できれば、式を選ぶ問題は落ちません。

上の3つは「支えられる人 ÷ 支える人」という同じ形をしています。従属人口指数は現在およそ70前後で、働く世代1人でおよそ0.6〜0.7人を支えている計算になります。

一方、老年化指数は分母が年少人口です。子どもが減れば分母が小さくなり、高齢者が増えれば分子が大きくなる。上下から挟まれて一気に大きくなるので、高齢化のスピードを見るのに向いています。

国試ではこう問われる

この単元は、式そのものを選ばせる必須問題と、表やグラフから指数を計算させる理論問題の2パターンです。

回 問われ方 ポイント
第98回・問125 国勢調査に関する記述 正解は「人口静態統計である」「結果は生命表の作成に用いられる」。10月1日(7月1日ではない)、外国人も対象、がひっかけ
第97回・問125 保健統計に関する記述 「老年人口は75歳以上」「平均余命は平均寿命から年齢を引く」「国勢調査は人口動態調査」はすべて誤り
第100回・問18 老年化指数を表す式はどれか 老年人口 ÷ 年少人口 × 100。分母が年少人口
第109回・問123 保健統計の大分類 正解は「人口統計は集団の健康水準の向上に重要」「人口静態統計の代表は国勢調査」
第107回・問120 年齢区分別人口割合の表から4指数を計算 15歳未満12%・15〜64歳59%・65歳以上29%。年少人口指数20.3(>20)と老年人口割合29%(>25%)が正しい
第103回・問125 1995/2015/2035年の3区分割合から計算 年少+老年=従属人口割合、老年化指数は20年で2倍以上が正しい

第107回の計算を実際にやってみます。老年化指数 = 29 ÷ 12 × 100 ≒ 241.7(250は超えない)、老年人口指数 = 29 ÷ 59 × 100 ≒ 49.2(50は超えない)、年少人口指数 = 12 ÷ 59 × 100 ≒ 20.3(20を超える)、従属人口指数 = 41 ÷ 59 × 100 ≒ 69.5(80は超えない)。割り算4回で解ける問題です。式さえ正確なら確実に取れます。

まとめ

  • 人口静態統計=国勢調査(一時点の写真)、人口動態統計=5つの届出(一年間の録画)
  • 国勢調査は5年ごと10月1日。末尾0が大規模、末尾5が簡易。外国人も対象で、結果は生命表の作成に使われる
  • 人口動態の届出は出生・死亡・婚姻・離婚・死産の5つ
  • 人口増減率 = 自然増減率(出生率−死亡率) + 社会増減率(移入率−移出率)
  • 年齢3区分は年少0〜14歳・生産年齢15〜64歳・老年65歳以上で、およそ1割・6割・3割
  • 人口指数は分母で見分ける。老年化指数だけ分母が年少人口

次は生命表とは|平均寿命と平均余命の違いを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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