食品機能と食品衛生

酸化防止剤の3分類|還元剤・ラジカル捕捉剤・キレート剤はどこで連鎖を止めるか【薬剤師国家試験】

食品添加物のマインドマップ
食品添加物のマインドマップ

酸化防止剤は、3つに分類されるという事実だけを覚えても点になりません。油脂の変敗の反応式の、どこを止めているのか——そこまで言えて初めて、選択肢の正誤が判定できます。

この記事は、油脂の変敗のラジカル連鎖反応を1本の輪として描き直し、その輪のどこに3種類の酸化防止剤が割り込むかという組み立てで進めます。講義もこの順番で話していて、変敗の反応図をそのまま使い回すのがこの教材の作りです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

まず、止めたい連鎖反応を思い出す

油脂の自動酸化は、一度始まると勝手に回り続ける輪です。

  1. 不飽和脂肪酸(RH)から、熱や光でH が引き抜かれる → 脂肪酸ラジカル(R・)
  2. R・ に O₂ がくっつく → ペルオキシラジカル(ROO・)
  3. ROO・ が別の不飽和脂肪酸から H を奪う → ヒドロペルオキシド(ROOH) + 新しい R・
  4. 3でできた R・ が 2 に戻る → 輪が閉じる
  5. 一方、ROOH は金属イオン(Fe、Cu)に触媒されて分解し、マロンジアルデヒドやカルボニル化合物になる。このとき新たなラジカルも生じるので、輪はさらに加速する

輪を止める場所は、原理的に2箇所しかありません。

  • ラジカル(ROO・)そのものを消す
  • ROOH を分解する金属イオンを取り上げる

この2つに、そもそも酸素を先に食わせて基質を守るという3つめを足したのが、酸化防止剤の3分類です。

3分類と、止める場所

酸化防止剤の3分類
酸化防止剤の3分類
分類 止める場所 代表的な物質
ラジカル捕捉剤 ROO・ にHを与えて消す(連鎖の伝播を断つ) BHT、BHA、トコフェロール(ビタミンE)、没食子酸プロピル
キレート剤(金属封鎖剤) Fe・Cuと錯体を作り、ROOHの分解を止める EDTA二ナトリウム、EDTAカルシウム二ナトリウム、クエン酸イソプロピル
還元剤 自らが先に酸化されて、食品の変色・退色を防ぐ エリソルビン酸、L-アスコルビン酸(ビタミンC)

輪の「どこ」を止めるかが、そのまま分類名になっている——ここが理解の核です。

ラジカル捕捉剤

上の図は、BHA(フェノール性水酸基を持つ)がペルオキシラジカルにHを渡すところを描いたものです。

  • ROO・ + AH → ROOH + A・
  • 自分自身がラジカル(A・)になるが、フェノール性のラジカルは共鳴で安定化されていて、それ以上連鎖を進めない
  • だから輪が止まる

「Hを与えて、自身が酸化されることで、ラジカル反応の連鎖を止める」——この一文が定義です。

物質名の中身も押さえておきます。

略号 正式名
BHT ジブチルヒドロキシトルエン
BHA ブチルヒドロキシアニソール

【原本の注意】マインドマップには「BHA(ジブチルヒドロキシアニソール)」と書かれていますが、正しくは「ブチルヒドロキシアニソール」(ブチル基は1つ)です。ジブチルなのはBHTのほうです。(誤記リストに登録済み)

トコフェロール=ビタミンEであることも必須です。体内で脂質の過酸化を止めているのと、食品中で油脂の酸化を止めているのは、まったく同じ反応です。生化学と衛生が直結する場所なので、ここは理屈で覚えてください。

キレート剤(金属封鎖剤)

ROOHの分解を触媒するFe・Cuを、錯体にして働けなくするのがキレート剤です。ラジカルそのものには触りません。

溶解性 物質 使用できる食品
水溶性 EDTA二ナトリウム、EDTAカルシウム二ナトリウム 缶詰・瓶詰のみ
脂溶性 クエン酸イソプロピル バター

EDTAは缶詰・瓶詰のみ、クエン酸イソプロピルはバターという使用制限まで決まっています。金属容器に入っている食品でこそ金属封鎖剤が要る、と考えると自然に覚えられます。

還元剤

エリソルビン酸とL-アスコルビン酸(ビタミンC)です。果物、野菜、漬物、缶詰の変色・退色を防ぐ目的で使われます。

  • エリソルビン酸はL-アスコルビン酸の異性体
  • 栄養素としてのビタミンC活性はほとんどないが、還元力はより強い

「栄養にはならないが、酸化防止剤としては優秀」という役割分担です。

国試ではこう問われる

① どの分類か、を用途名で聞く

第104回・問119「Dは、金属封鎖型の酸化防止剤である」 第105回・問124「Cは脂溶性の酸化防止剤である」 第108回・問130「Dは、金属封鎖作用のある酸化防止剤である」 第110回・問128「Dは、金属イオンと錯体を形成することによって、油脂などの酸化を防ぐ目的で使用される」 第111回・問129「Bは、油脂等の酸化防止剤として用いられている」

「金属封鎖」というキーワードは、ほぼ毎年出ています。構造式にEDTAらしい形(窒素から4本のカルボキシメチル基)が見えたら、迷わずキレート剤です。

② 輸液成分としても使われる酸化防止剤

L-アスコルビン酸(ビタミンC)は酸化防止剤であると同時に、輸液成分としても利用されます。食品添加物であり、医薬品成分でもあるという重なりを押さえておいてください。

③ 構造式だけで用途を当てさせる

第101回・問17「酸化防止剤に指定されている食品添加物はどれか」——構造式が5つ並ぶ必須問題です。フェノール性水酸基+かさ高いt-ブチル基が見えたらBHT・BHA、ラクトン環を持つエンジオールが見えたらアスコルビン酸系、と当たりをつけます。

④ 油脂の変質試験との接続

酸化防止剤は、何を測っているかとセットで理解すると崩れません。過酸化物価(POV)はヒドロペルオキシド(ROOH)を、カルボニル価やTBA価はROOHが分解してできた二次生成物を測っています。ラジカル捕捉剤はROOHの生成そのものを抑え、キレート剤はROOHの分解を抑える——測定値のどこに効くかが違うわけです。油脂の変敗と変質試験は、食品の変質の単元で扱います。

まとめ

  • 油脂の自動酸化は、R・ → ROO・ → ROOH + 新しいR・ で回る連鎖反応の輪
  • 酸化防止剤は、この輪のどこを止めるかで3つに分かれる
  • ラジカル捕捉剤はROO・にHを与えて消す。BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、トコフェロール(ビタミンE)、没食子酸プロピル
  • キレート剤(金属封鎖剤)はFe・Cuと錯体を作り、ROOHの分解を止める。水溶性のEDTA二ナトリウム・EDTACa二ナトリウム(缶詰・瓶詰のみ)、脂溶性のクエン酸イソプロピル(バター)
  • 還元剤はエリソルビン酸・L-アスコルビン酸。エリソルビン酸はビタミンC活性はほぼないが還元力は強い
  • 国試では「金属封鎖」「脂溶性」「輸液成分としても使われる」という言い回しで繰り返し問われている

次は色に関わる食品添加物|着色料・漂白剤・発色剤(亜硝酸Na)の機序を読んでみてください。食品添加物の後半戦、色系に入ります。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

-食品機能と食品衛生

© 2026 マインドマップ薬学 Powered by AFFINGER5