
ここまで、保存料と殺菌料、甘味料と防カビ剤、酸化防止剤、色系と、物質の側から食品添加物を見てきました。
この記事では、それを法律の側から整理し直します。具体的には次の3つです。
- 法的分類(指定添加物・既存添加物・天然香料・一般飲食物添加物)
- 指定制度とポジティブリスト方式
- 表示のルール(用途名の併記、加工助剤・キャリーオーバーなどの免除)
表示免除(加工助剤・キャリーオーバー)は、アレルギー表示で「免除が効かない」という形でも出てきます。両方から確認できるようにしておいてください。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
食品添加物の定義

食品衛生法 第4条第2項 添加物とは、食品の製造の過程において、または食品の加工もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいう。
定義の中に「製造の過程」と「加工もしくは保存の目的」の両方が入っているのがポイントです。最終製品に残らない加工助剤も、この定義では添加物——だからこそ、後述の表示免除という仕組みが必要になります。
なお、食品添加物の規格基準を定めているのは食品衛生法です。食品安全基本法ではありません(前の記事参照)。規格基準の具体的な中身は食品添加物公定書にまとめられています。
制度ができた経緯
ヒ素ミルク事件が直接のきっかけです。食品添加物の純度が悪く、ヒ素が混入していた——つまり「何を使うか」だけでなく「どれだけ純粋なものを使うか」まで決めないと事故は防げない、という教訓から、食品添加物公定書で規格基準を定めることになりました。
法的分類:4つに分かれる
| 分類 | 内容 | 指定制度 |
|---|---|---|
| 指定添加物 | 安全性評価のうえ、国(内閣総理大臣)が指定したもの | 対象(原則) |
| 既存添加物 | 昔から使われてきた実績があり、指定を受けずに使用・販売が認められているもの | 例外的に使用可 |
| 天然香料 | 植物・動物から得られる香り付けの成分(りんご、緑茶、乳など)。ごく微量しか使わない | 対象外 |
| 一般飲食物添加物 | 通常は食品だが、添加物としても使われるもの(寒天、着色目的のオレンジ果汁など) | 対象外 |

「昔からあったやつら」の3つ(既存添加物・天然香料・一般飲食物添加物)が、指定制度の外にある——この構図で覚えると整理できます。
品目数(令和7年8月25日現在):指定添加物 476品目、既存添加物 327品目。天然香料は約600品目、一般飲食物添加物は約100品目が例示されています。(出典: 日本食品添加物協会)
既存添加物は、安全性に問題があるものや使用実績のなくなったものが順次消除されるため、数が減っていきます。数字を断定する選択肢が出たら、まず「増えているのか減っているのか」で判断してください。
指定制度とポジティブリスト方式
原則として、国(内閣総理大臣)が指定した添加物しか使ってはいけない。 (天然香料と一般飲食物添加物は除く。既存添加物は例外的に使用可)
指定するのは、2024年3月までは厚生労働大臣でした。2024年4月に食品衛生の基準づくりが消費者庁へ移ったため、今は内閣総理大臣です。古い問題集の「厚生労働大臣が指定」は当時の記述と読んでください。
この「許可されたものだけを使ってよい」という考え方がポジティブリスト方式です。「禁止されたもの以外は使ってよい」(ネガティブリスト)の逆である、という対比で押さえます。
残留農薬にも同じ方式が導入されていて、こちらは基準が設定されていない農薬について一律基準0.01ppmが適用されるというルールがあります。
第101回・問124「ポジティブリスト制度により、国内で流通しているすべての農薬について、食品中の残留基準が個別に設定されている」——誤り。個別に基準が設定されていない農薬には、一律基準(0.01ppm)が適用されるのがポジティブリスト制度です。「すべてに個別の基準がある」わけではありません。
【原本の注意】マインドマップの「食品添加物」側のノードに「ポジティブリスト方式=……食品添加物だけ使用する制度 原則一律基準0.01ppm」と書かれていますが、0.01ppmの一律基準は残留農薬の話です。食品添加物については、物質ごとに使用基準(使用できる食品と最大使用量)が定められます。(誤記リストに登録済み)
使用目的の4分類
食品添加物は、何のために使うかで4つに整理されます。
| 目的 | 例 |
|---|---|
| 食品の嗜好性を高める | 着色料(色をつける)、香料・甘味料(色や香り・甘味)、増粘安定剤(食感をよくする) |
| 加工・製造に必要 | 豆腐を固めるにがり、ラーメンのかんすい、ビールをろ過する活性炭 |
| 品質低下の防止(保存性の向上) | 殺菌料・保存料・酸化防止剤・防カビ剤 |
| 栄養価・栄養素の補充強化 | ビタミン・ミネラル・アミノ酸 |
3つめのグループ(殺菌料・保存料・酸化防止剤・防カビ剤)が、この単元で各論として扱ってきた添加物です。4分類のどこに入るかを意識すると、記事どうしのつながりが見えます。
安全性試験としては、急性毒性・慢性毒性・繁殖(生殖)毒性・催奇形性・変異原性・がん原性・抗原性などの試験が課されます。
マーケットバスケット方式
実際に国民がどれだけ添加物を摂っているかを調べる方法です。
スーパーで売られている食品を実際に買い集めて分析し、そこに含まれる添加物の量に、栄養調査から得られた食品摂取量を掛け合わせて、一日摂取量を推定する。
「使用基準どおりに使われている前提で計算する」のではなく、実際の食卓から積み上げるのがこの方式の特徴です。求めた一日摂取量をADI(一日摂取許容量)と比べて安全性を確認します。
第108回・問134は、まさにこの考え方を計算させる問題でした。5つの食品群からの甘味料Aの一日摂取量と、ADI設定のための無毒性量が与えられ、一日摂取量がADIの何%に当たるかを求めます。無毒性量 ÷ 安全係数100 = ADI(mg/kg体重/日)、これに体重60kgを掛けて1人あたりの許容量にする、という流れです。
表示のルール
基本
容器包装に入れられた加工食品は、原則としてすべての添加物を物質名で表示する。 さらに、一部の添加物は用途名も併記する。
用途名の併記が必要なのは、次の8用途です。
- 甘味料
- 着色料
- 保存料
- 増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊料
- 酸化防止剤
- 発色剤
- 漂白剤
- 防かび剤(防ばい剤)
第107回・問18「食品表示法に基づき、用途名と物質名を併記する必要がある食品添加物はどれか」——選択肢は香料、甘味料、調味料、乳化剤、pH調整剤。答えは甘味料です。香料・調味料・乳化剤・pH調整剤は一括名表示が認められているグループなので、ここで切れます。

上の図のとおり、L-アスコルビン酸を酸化防止剤として使ったら「酸化防止剤(ビタミンC)」と用途名込みで書く、というのが併記のルールです。
表示免除:3つ+バラ売り(栄養強化目的は2025年に廃止)
| 免除の種類 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 加工助剤 | ①完成前に除去される ②最終的に食品に通常含まれる成分になる ③最終的にごく少量で、食品に影響を与えない |
①油の抽出に使うヘキサン ②水質調整用の炭酸マグネシウム ③豆腐の消泡目的のシリコーン樹脂 |
| キャリーオーバー | 添加物を含む原材料に由来して入っているが、最終製品に対して効果を発揮する量より少ないもの | 醤油せんべいの、醤油由来の安息香酸(保存料) |
| 栄養強化目的(2025年3月の改正で廃止) | 栄養強化の目的で使用する場合。経過措置は2030年3月31日まで | L-アスコルビン酸を栄養強化目的で使う場合 |
| 店頭でのバラ売り | 容器包装に入っていないので表示義務なし | — |

キャリーオーバーかどうかは「最終製品で効果を発揮しているか」で決まります。上の図の3例が、そのまま判定の練習になります。
- 保存料の安息香酸を含む醤油で、せんべいに味付けした → 安息香酸は含有量が少なく、せんべいには保存効果を持たない → キャリーオーバー。表示不要
- 着色料を使ったメロンソースを、メロンアイスに使用した → 最終製品にも色としての効果がある → キャリーオーバーではない。表示が必要
- 発色剤を使ったハムを、ポテトサラダに入れた → ハムはその原型をとどめている(発色剤の効果が生きている) → キャリーオーバーではない。表示が必要
「原材料の中でだけ働いて、最終製品では働いていない」ならキャリーオーバー。この一文で判定できます。
バラ売りの例外
店頭でのバラ売りは原則として表示義務がないが、防カビ剤と甘味料(サッカリン系のみ)はバラ売りでも表示義務がある。
輸入柑橘の陳列に「防ばい剤使用」の札が出ているのは、このためです(甘味料と防カビ剤の記事参照)。
【重要】「人工」「合成」の用語は廃止されている
2020年(令和2年)7月16日の食品表示基準改正で、「人工」「合成」の用語が削除されました。経過措置は2022年3月31日までで、現在は完全に移行済みです。
旧表示 現在の表示 人工甘味料/合成甘味料 甘味料 合成着色料 着色料 合成保存料 保存料 合成香料 香料 理由は、「人工」「合成」という文言があるだけで避ける消費者がいることが調査で分かったため。消費者の誤認を防ぐという趣旨です。
講義やマインドマップ、古い問題集には「人工甘味料」という表記が残っていますが、現在の表示ルールでは使われません。リスクコミュニケーションの「自然由来は安全、合成化学物質は危険」という思い込みへの対策でもある、と考えると腑に落ちます。(出典: 消費者庁 食品表示基準の一部改正)
国試ではこう問われる
① 用途名の併記
第107回・問18。甘味料・着色料・保存料・増粘剤等・酸化防止剤・発色剤・漂白剤・防かび剤の8用途。
② ポジティブリスト制度
第101回・問124。一律基準0.01ppmは残留農薬の話。「すべての農薬に個別基準がある」は誤り。
③ 規格基準を定める法律
第101回・問124「食品添加物の規格や使用基準は、食品安全基本法で定められている」→誤り。食品衛生法です。
④ キャリーオーバーの例外(アレルギー表示)
第98回・問229「小麦に関しては、キャリーオーバーの場合でも、表示が義務づけられる」——正しい記述。 第100回・問231「当該原材料を使用した食品添加物については、表示が免除されている」——誤り。
添加物の表示免除は、特定原材料には効かない。この逆転が、いちばんよく問われます(食品表示法の記事参照)。
⑤ ADIとマーケットバスケット方式
第108回・問134。無毒性量 ÷ 安全係数100 = ADI。
⑥ 指定添加物であること
第110回・問128「Aは、食品に甘味を与える目的で使用される指定添加物である」——用途と法的分類の両方を1つの記述に入れてきます。主な合成添加物は指定添加物、と押さえておけば大きく外しません。
まとめ
- 食品添加物の定義は食品衛生法第4条第2項。規格基準は食品衛生法(食品安全基本法ではない)。中身は食品添加物公定書
- 制度の出発点はヒ素ミルク事件——純度まで決めないと事故は防げない
- 法的分類は指定添加物(国が指定。2024年4月から内閣総理大臣、それまでは厚生労働大臣)/既存添加物/天然香料/一般飲食物添加物。後ろの3つは指定制度の対象外
- 指定添加物476品目、既存添加物327品目(令和7年8月25日現在)。既存添加物は減っていく
- ポジティブリスト方式=許可されたものだけ使ってよい。残留農薬の一律基準は0.01ppm
- 使用目的は嗜好性/加工・製造/品質低下の防止/栄養強化の4つ
- マーケットバスケット方式で一日摂取量を調べ、ADIと比較する
- 用途名の併記が必要なのは8用途(甘味料・着色料・保存料・増粘剤等・酸化防止剤・発色剤・漂白剤・防かび剤)
- 表示免除は加工助剤・キャリーオーバー、そしてバラ売り(栄養強化目的の免除は2025年3月の改正で廃止、経過措置は2030年3月末まで)。ただしバラ売りでも防カビ剤と甘味料(サッカリン系)は表示義務
- キャリーオーバーの判定は「最終製品で効果を発揮しているか」
- 特定原材料には表示免除が効かない
- 2020年の改正で「人工」「合成」の用語は削除された
これで、栄養と食品衛生(Cブロック)の33記事がすべて出そろいました。
次は栄養と食品衛生まとめ|33記事で全体像をつかむを読んでみてください。食中毒の菌を機序で並べ直した一覧、食品添加物を「変質のどこで止めるか」で並べ直した表など、33本を横断しないと作れないものをそこにまとめてあります。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。