
食品添加物は量が多い単元ですが、国試での問われ方はほぼ1パターンに固まっています。
構造式A〜Eを並べて、「Aは〜の用途である」という記述の正誤を判定させる。
第101回・問17、第104回・問119、第105回・問124、第108回・問130、第110回・問128、第111回・問129——この形が毎年のように出ています。つまり必要なのは、物質名と用途の対応、そして構造の特徴から用途を逆算する手がかりです。
この記事では、まず保存料を語呂と構造から入れ、次に殺菌料と対比します。「増殖を抑える」のか「殺す」のかという定義の違いが、そのまま選択肢になります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
保存料と殺菌料は、定義からして別物
| 保存料 | 殺菌料 | |
|---|---|---|
| 目的 | 腐敗・変敗の原因となる微生物の増殖を抑制し、保存性を高める | 腐敗微生物を死滅させる |
| 作用 | 静菌的 | 殺菌的 |
| 対象 | 細菌・カビ・酵母 | — |
食品衛生法上の定義にも、「微生物を殺すことを目的とした殺菌料とは異なる」とわざわざ書かれています。保存料は殺さない。増えないようにするだけ。ここは定義の一文がそのまま出題される可能性があるので、言葉ごと覚えてください。
保存料の語呂

保存する フロッピー パラソルで 安心
| 語呂 | 物質 | 型 |
|---|---|---|
| 保存する | 保存料 | — |
| フロッピー | プロピオン酸 | 酸型 |
| パラ | パラオキシ安息香酸(エステル) | 非解離型 |
| ソル | ソルビン酸 | 酸型 |
| で | デヒドロ酢酸Na | 酸型 |
| 安 | 安息香酸(・安息香酸Na) | 酸型 |
| 心(シン) | ナイシン | 非解離型 |
6物質が酸型4つ・非解離型2つに分かれます。語呂で6つ出したあと、「パラ」と「シン」だけが非解離型と覚えると、2段階で確実に取り出せます。


ナイシンは比較的新しく指定された保存料(2009年指定)で、乳酸菌がつくるペプチド(バクテリオシン)です。講義でも「新しいやつ」と紹介されています。
酸型保存料が「pHが低いほど効く」理由
ここが保存料でいちばん出題される論点です。丸暗記せず、理屈で押さえます。

- 細菌の細胞膜は負(マイナス)に帯電している
- 酸型保存料は弱酸なので、水中で RCOOH ⇄ RCOO⁻ + H⁺ の平衡にある
- pHが高い(H⁺が少ない)と平衡は右に寄り、解離型(RCOO⁻)が増える
- マイナス同士で反発するので、細菌の中に入れない → 効きにくい
- pHが低い(H⁺が多い)と平衡は左に寄り、分子型(RCOOH)が増える
- 分子型は電荷を持たないので反発されず、細胞膜を通れる → 効きやすい
つまり、酸型保存料は食品のpHが低いほど効果が大きい。
一方、非解離型(パラオキシ安息香酸エステル、ナイシン)は、そもそも解離しにくい構造なので、抗菌性が食品のpHの影響を受けにくいという性質になります。
「酸性で効く=酸型」「pHで変わらない=非解離型」——この2行で、出題の大半に答えられます。
第104回・問119「Eは、酸性で効果の高い保存料である」 第105回・問124「DはpHによって効果が変化しない保存料である」 第108回・問130「Cは、酸性領域で効力のある保存料である」
3年分並べるとわかるとおり、毎回この2種類のどちらかを聞いています。
構造から用途を逆算する

構造式問題に備えて、見た目の手がかりを整理しておきます。
| 物質 | 構造の特徴 |
|---|---|
| プロピオン酸 | 炭素3つの直鎖カルボン酸(メタン・エタン・プロパンの3つ目)。CH₃CH₂COOH |
| 安息香酸 | ベンゼン環にCOOHが1つだけついた、いちばん単純な芳香族カルボン酸 |
| ソルビン酸 | 二重結合を2つ持つ直鎖のカルボン酸(ヘキサジエン酸)。鎖の途中がジグザグに見える |
| パラオキシ安息香酸エステル | 安息香酸のパラ位にOH。さらにCOOHがエステルになっている |
安息香酸を基準に置いて、「パラ位にOHが付いたらパラオキシ安息香酸」と考えると、2つを見分けやすくなります。パラベン(化粧品の防腐剤)と同じものだと知っていると、記憶が一気に固まります。
殺菌料:「ジャイアン母さん殺した」

ジャイアン 母さん 殺した
| 語呂 | 物質 | 系統 |
|---|---|---|
| ジャイ(次亜)アン | 次亜塩素酸(ナトリウム) | 塩素系 |
| 母(か)さん | 過酸化水素 | 酸素系 |
| 殺した | 殺菌料 | — |
塩素系にはこのほか、亜塩素酸Na・高度さらし粉があります。
過酸化水素は「完成前に分解または除去」
過酸化水素には発がん性が認められています。そのため、最終食品の完成前に分解または除去することが条件になっています。
この「完成前に分解または除去」という言い回しは、食品添加物の表示ルールでいう加工助剤の考え方そのものです。最終製品に残らないから表示が免除される。同じロジックが、漂白剤の亜塩素酸Naにも出てきます。「完成前に分解or除去」と書いてあったら加工助剤と結びつけてください。
国試ではこう問われる
① 酸型か非解離型か
第104回・問119、第105回・問124、第108回・問130。「酸性で効く」「pHで変わらない」の2択です。
② 保存料と殺菌料の定義の入れ替え
保存料は増殖抑制(静菌的)、殺菌料は死滅(殺菌的)。「保存料は微生物を死滅させる」という選択肢が来たら誤りです。
③ 用途名の判定問題
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)は食品添加物としては殺菌料に分類されること、そして漂白剤として指定されているのは亜塩素酸Na(酸化型)と亜硫酸Na(還元型)であることを、セットで確認しておいてください。
第110回・問128には「Eは、カビや細菌などの発育を抑制し、保存性を高める目的で乳製品などの食品に添加して使用される」という記述もあります。「発育を抑制」=保存料の定義そのものです。定義の一文を覚えていれば、用途名の判定に使えます。
④ ADIの計算
第108回・問134では甘味料を題材にADI計算が出ましたが、同じ計算は保存料でも成立します。マーケットバスケット方式による一日摂取量調査とあわせて、食品添加物の法的規制で扱います。
まとめ
- 保存料=微生物の増殖を抑制(静菌的)、殺菌料=腐敗微生物を死滅させる(殺菌的)。定義が明確に区別されている
- 保存料の語呂は「保存するフロッピー、パラソルで安心」——プロピオン酸・パラオキシ安息香酸・ソルビン酸・デヒドロ酢酸Na・安息香酸・ナイシン
- 酸型(4つ)は食品のpHが低いほど効果大。理由は分子型が増えて、負に帯電した細胞膜に反発されずに入れるから
- 非解離型(パラオキシ安息香酸エステル・ナイシン)は、抗菌性がpHの影響を受けにくい
- 殺菌料の語呂は「ジャイアン母さん殺した」——次亜塩素酸(塩素系)・過酸化水素(酸素系)。塩素系には亜塩素酸Na・高度さらし粉も
- 過酸化水素は発がん性があるため、完成前に分解または除去する(=加工助剤と同じ考え方)
次は食品添加物の甘味料と防カビ剤|「サッカーで汗かく」と「おじいちゃんカビ臭い」を読んでみてください。どちらも語呂が用意されている、得点源の単元です。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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