
甘味料と防カビ剤は、どちらも語呂が用意されていて、かつ国試での出題が多いという、費用対効果の高い単元です。
そのうえ、この2つは性格が対照的です。甘味料は物質ごとの個性(どこに使われるか、誰に注意が必要か)を問われ、防カビ剤は4物質をまとめて言えるかを問われます。覚え方も、それに合わせて変えます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
甘味料の語呂

サッカーで 汗かく トールさん 明日から くらそう
| 語呂 | 物質 | 人工/天然 |
|---|---|---|
| サッカー | サッカリン | 人工 |
| 汗(あせ)かく | アセスルファムK | 人工 |
| トール | キシリトール | 天然 |
| 明日(あす)から | アスパルテーム | 人工 |
| くら | スクラロース | 人工 |
天然の甘味料としては、キシリトールとD-ソルビトールを押さえておきます。
物質ごとの個性
サッカリン:チューインガムだけ
サッカリン(サッカリンナトリウムを除く)の使用が認められているのはチューインガムのみです。「甘味料なのに使える食品が1つしかない」という尖った特徴なので、そのまま問われます。
構造の手がかりは、ベンゼン環に縮合した五員環の中に硫黄(S)と窒素(N)があること。SO₂とC=Oが窒素を挟む形です。
アセスルファムK:カリウムが付いている
名前に金属イオンが付いている甘味料は、アセスルファムKくらいのものです。構造式でもK⁺が離れて描かれます。「甘味料でカリウムが見えたらアセスルファムK」という引き当て方ができます。
アスパルテーム:フェニルケトン尿症に注意
アスパルテームは、アスパラギン酸とフェニルアラニンメチルエステルが結合したジペプチドです。ここが国試の急所になります。
- ペプチド結合を持つ甘味料である
- 体内で分解されてフェニルアラニンを生じる
- したがってフェニルケトン尿症の患者は摂取を避ける必要がある
- 「L-フェニルアラニン化合物を含む」旨の表示が義務づけられている
- 甘味度はショ糖の約200倍
第109回・問130「甘味料のうち、フェニルケトン尿症患者に対する注意喚起の表示が義務づけられているのはどれか」——答えはアスパルテーム。必須レベルの1点です。
第104回・問119「Bは、アスパルテームと同様、ペプチド結合をもつ甘味料である」——アスパルテームがペプチドであることを前提にした記述です。
フェニルケトン尿症は新生児マススクリーニングの対象疾患です。衛生の中で、疾病の予防の単元と食品添加物の単元が直接つながる数少ない場所なので、両方から思い出せるようにしておくと強いです。
また、表示可能面積が小さくても省略できないことも押さえておきます(食品表示法の記事参照)。
アドバンテーム:アスパルテームから作られた新顔
アスパルテームを改良して作られた甘味料で、2014年に指定されました。語呂には入っていません。「アドバンス(先に進んだ)アスパルテーム」と結びつけて、語呂の外に1つだけ足しておくのが現実的です。
スクラロース:スクロースの塩素化物
スクロース(ショ糖)のOHの一部をCl(塩素)に置き換えたものがスクラロースです。「スクラ」の“クラ”はClだと思え、というのが講義の覚え方です。構造式にClが3つ見えたらスクラロースを疑ってください。
キシリトール:虫歯菌が代謝できない
天然甘味料の代表。虫歯菌(ミュータンス菌)はキシリトールを糖と間違えて取り込むが、代謝してエネルギーにできず、酸も歯垢も作れない——だから「虫歯の原因になりにくい」というトクホの表示につながります。パラチノースも同じ枠です。
防カビ剤の語呂

おじいちゃん カビ臭い
| 語呂 | 物質 |
|---|---|
| お | オルトフェニルフェノール(OPP) |
| じ | ジフェニル(DP) |
| い | イマザリル |
| ちゃん | チアベンダゾール(TBZ) |
【原本の注意】マインドマップの語呂画像では「チアペンタゾール」と書かれていますが、正しくは「チアベンダゾール(thiabendazole、TBZ)」です。同じマインドマップ内の構造式のページでは「チアベンダゾール」と正しく表記されています。記事では正しい名称で覚えてください。(誤記リストに登録済み)
構造の手がかりも整理しておきます。
| 物質 | 構造の特徴 |
|---|---|
| オルトフェニルフェノール | フェノールのオルト位にフェニル基。ベンゼン環2つ+OH |
| ジフェニル | ベンゼン環が2つつながっただけ(ビフェニル)。置換基なし |
| イマザリル | イミダゾール環と塩素2つのベンゼン環。いちばん複雑 |
| チアベンダゾール | ベンズイミダゾールにチアゾール環。「チア」なので硫黄(S)が入っている |
「チア」=Sという手がかりは、構造式問題で確実に効きます。
防カビ剤とポストハーベスト農薬
防カビ剤は、収穫後(post-harvest)の輸送・貯蔵中のカビの発生を防ぐために使われます。柑橘類やバナナの輸入品が典型です。
ここが独特なのは、同じ物質が、海外では農薬、日本では食品添加物として扱われるという点です。
第105回・問124「Bは海外でポストハーベスト農薬として使用されているが、我が国では食品添加物の防かび剤に指定されている」 第111回・問129「Cは、柑橘類の防かび剤として用いられている」
この「海外では農薬、日本では添加物」という言い回しは、そのまま出題文になります。
そして表示のルールにも例外があります。
店頭でのバラ売りは原則として表示義務がないが、防カビ剤と甘味料(サッカリン系のみ)はバラ売りでも表示義務がある。
スーパーの輸入グレープフルーツの陳列に「防ばい剤(OPP、TBZ)使用」と札が出ているのは、このルールのためです。甘味料と防カビ剤が同じ例外に並んでいるのは、この記事で2つをまとめて扱う理由でもあります。詳しくは食品添加物の法的分類と表示ルールで扱います。
国試ではこう問われる
① アスパルテームとフェニルケトン尿症
第109回・問130がそのままです。甘味料で1つだけ覚えるならこれ。
② 構造式から用途を当てる
第104回・問119、第105回・問124、第108回・問130、第110回・問128、第111回・問129。甘味料と防カビ剤は、このA〜E問題の常連です。Cl(スクラロース)、K⁺(アセスルファムK)、S(チアベンダゾール)、ペプチド結合(アスパルテーム)という手がかりを用意しておいてください。
③ ポストハーベスト農薬との関係
第105回・問124、第111回・問129。海外では農薬、日本では防カビ剤。
④ 用途名の併記
第107回・問18「食品表示法に基づき、用途名と物質名を併記する必要がある食品添加物はどれか」——選択肢は香料・甘味料・調味料・乳化剤・pH調整剤で、答えは甘味料です。甘味料は用途名併記が必要な8用途の1つ(法的分類と表示ルールの記事で一覧にします)。
⑤ ADIの計算
第108回・問134は「甘味料Aの一日摂取量がADIの何%に相当するか」を計算させる問題でした。無毒性量を安全係数100で割ってADIを出すという流れです。
まとめ
- 甘味料の語呂は「サッカーで汗かくトールさん、明日からくらそう」——サッカリン・アセスルファムK・キシリトール・アスパルテーム・スクラロース
- サッカリンはチューインガムのみ
- アセスルファムKはKが付いている
- アスパルテームはアスパラギン酸+フェニルアラニンメチルエステルのジペプチド。ショ糖の約200倍。フェニルケトン尿症への注意喚起表示が義務
- アドバンテームはアスパルテームから作られた新しい甘味料(語呂の外)
- スクラロースはスクロースのOHをClに置換したもの
- 天然甘味料はキシリトール・D-ソルビトール
- 防カビ剤の語呂は「おじいちゃんカビ臭い」——オルトフェニルフェノール・ジフェニル・イマザリル・チアベンダゾール
- 防カビ剤は海外ではポストハーベスト農薬、日本では食品添加物
- バラ売りでも表示義務があるのは、防カビ剤と甘味料(サッカリン系)
次は酸化防止剤の3分類|還元剤・ラジカル捕捉剤・キレート剤はどこで連鎖を止めるかを読んでみてください。油脂の変敗の反応式に戻りながら、3つの止め方を整理します。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。