食品機能と食品衛生

食品表示法|アレルギー表示の特定原材料と栄養成分表示・期限表示【薬剤師国家試験】

食品衛生の法的規制のマインドマップ
食品衛生の法的規制のマインドマップ

食品表示法は2015年(平成27年)に施行された、意外と新しい法律です。なぜ新しいのかというと、それまで食品の表示ルールが3つの法律にばらけていたからです。

  • JAS法(農林物資の規格化等に関する法律)
  • 食品衛生法
  • 健康増進法

この3本に散らばっていた表示に関する規定だけを抜き出して1本にまとめたのが食品表示法です。「統合して一元化した」という言い方がそのまま選択肢になります。

国試で問われるのは、アレルギー表示・栄養成分表示・期限表示の3つ。この記事はこの順で進めます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

まず、法律の出どころを押さえる

第101回・問124「食品表示法は、JAS法、食品衛生法、健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して、包括的かつ一元的にしたものである」——正しい記述。そのまま出ています。

第98回・問229では逆向きに「食品中のアレルギー物質の表示は、JAS法に定められている」という誤りの選択肢が出されました。アレルギー表示の根拠は食品表示法(食品表示法の施行前は食品衛生法)です。

もう1つ、誰が基準を定めるかも狙われます。

第106回・問130「食品表示法において、厚生労働大臣により食品に関する表示の基準が定められている」——誤り。食品表示基準は内閣総理大臣(消費者庁)が定めます。食品衛生法から表示の部分を切り出して消費者庁に移した、という経緯を思い出せば判断できます。

アレルギー表示:特定原材料は現在9品目

語呂で7品目を入れて、くるみとカシューナッツを足す

特定原材料の語呂
特定原材料の語呂

そらに こたえが アレルギー

語呂 品目
そ そば
ら 落花生
に 乳
こ 小麦
た 卵
え えび
が かに

これが長く「特定7品目」と呼ばれてきたものです。

【重要】2023年3月に「くるみ」が特定原材料に追加され(経過措置は2025年3月31日まで、2025年4月から完全施行)、さらに2026年(令和8年)4月1日に「カシューナッツ」が追加されて、現在は9品目です。カシューナッツの経過措置は公布から2年間(2028年3月31日まで)で、その間は表示が切り替わっていない商品も残ります。

講義・マインドマップは7品目のままなので、語呂に「くるみ」と「カシューナッツ」を足して覚えてください。「そらにこたえがアレルギー、くるみとカシューも」のように、ナッツ2つをまとめて足すと覚えやすいです。

(出典: 消費者庁「くるみの特定原材料への追加等について」「食物アレルギー表示に関する情報」)

過去問は7品目時代のままなので、混乱しないように整理しておきます。

第100回・問231「現在、表示が義務付けられている特定原材料は、えび、かに、たこなど7品目である」——誤り(たこは特定原材料ではない)。 第105回・問229「栗やバナナは、重篤なアレルギー症状を引き起こす可能性があるため、これらを含む食品には特定原材料(7品目)として表示する義務がある」——誤り(バナナは推奨表示、栗はどちらにも入らない)。 第106回・問130「食品表示法において、食物アレルギーの発症数が多い、あるいは症状が重篤となる7品目を特定原材料と定め、表示を義務付けている」——出題時点では正しい記述。現行では9品目です。

品目数を断定する選択肢が出たら、その回が何年の試験かを確認してください。

特定原材料に準ずるもの(推奨表示)も動いている

義務ではなく表示を推奨されているのが「特定原材料に準ずるもの」で、現在20品目です。

アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

2024年にマカダミアナッツが追加され、まつたけが削除されました。2026年4月には、カシューナッツが特定原材料へ移り、代わりにピスタチオが加わっています。全国実態調査で症例数の順位が入れ替わったためです。ここも数字と顔ぶれが動くので、断定する前に最新の一覧を確認する癖をつけてください。

特定原材料は、キャリーオーバーでも表示する

ここが国試の急所です。

食品添加物の表示には、加工助剤・キャリーオーバーという表示免除があります(栄養強化目的の免除は2025年3月の改正で廃止。経過措置は2030年3月31日まで)。ところが、特定原材料についてはその免除が効きません。

特定原材料は、重篤な症状を起こす、または発生件数が多いため、キャリーオーバー・加工助剤についても最終製品まで表示しなければならない。含有量が微量であっても必ず表示する。

たとえば醤油せんべい。せんべいに使った醤油に含まれる安息香酸(保存料)はキャリーオーバーなので表示不要ですが、その醤油の原料である小麦はアレルギー表示が必要です。同じ1枚のせんべいで、添加物は免除・アレルゲンは義務という逆転が起きます。

第98回・問229「小麦に関しては、キャリーオーバーの場合でも、表示が義務づけられる」——正しい記述。 第100回・問231「当該原材料を使用した食品添加物については、表示が免除されている」——誤り。食品添加物由来でも表示が必要です。

例外は、量り売りや対面販売です。

第100回・問231「対面販売や量り売り販売の場合は、表示義務はない」——正しい記述。容器包装に入れられていない食品には、そもそも表示のルールがかかりません。

同じ問題の「当該原材料が重量で5%以上含まれている場合に表示義務が生じる」は誤り。アレルギー表示に含有量の下限はありません。数値基準があるのは遺伝子組換え食品の表示(5%)のほうで、そこと混ぜてくる作りです。

もう1つ、表示可能面積が小さいときの扱いも出ています。

第102回・問122「特定原材料又はL-フェニルアラニン化合物を含む加工食品では、表示可能面積が小さくても、これを含む旨の表示を省略してはいけない」——正しい記述。小さな包装では省略できる表示もありますが、アレルゲンとL-フェニルアラニン化合物(アスパルテーム)は別格です。アスパルテームの話は甘味料と防カビ剤の記事につながります。

乳児の食物アレルギーは鶏卵が最多

食物アレルギーとアレルギー様食中毒
食物アレルギーとアレルギー様食中毒
  • 原因の約40%が鶏卵で最多
  • 原因物質は卵白中のタンパク質(オボアルブミンなど)。卵黄ではない
  • 乳児は腸の消化吸収機能が未熟なため、抗原性を持ったままタンパク質が吸収されてしまい、アレルギーを発症する
  • 成長すると分解能が上がるので、抗原が入らなくなりアレルギーが軽快していく

第98回・問229では「乳児期の食物アレルギーの原因食品として最も多いのは、大豆である」「鶏卵中の食物アレルギーの主な原因物質は、卵黄に存在するタンパク質である」が、いずれも誤りの選択肢として並べられました。鶏卵・卵白の2点を押さえておけば両方切れます。

アレルギー様食中毒との対比

ヒスチジンからヒスタミンへ
ヒスチジンからヒスタミンへ

名前が似ているだけで、まったく別物です。

食物アレルギー(Ⅰ型) アレルギー様食中毒
機序 抗原がIgEに結合→肥満細胞からヒスタミン遊離 細菌のヒスチジン脱炭酸酵素が食品中のヒスチジンをヒスタミンに変える
IgEの関与 あり なし
原因食品 鶏卵、乳、小麦など 赤身魚(いわし、さんま、まぐろ)
症状 — 食後30分〜1時間で顔面紅潮、発疹、吐き気

どちらも最後はヒスタミンが悪さをするのに、そこへ至る道が違う。ヒスタミンが外から来るか(食中毒)、体の中で出るか(アレルギー)、という分け方で覚えてください。

栄養成分表示:義務は5項目

容器包装に入れられた加工食品には、次の5項目の表示が義務です。

順番 項目
1 熱量
2 たんぱく質
3 脂質
4 炭水化物
5 食塩相当量(ナトリウム)

この順序で表示することまで決まっています。そして最後の1つが頻出です。

ナトリウムは「食塩相当量」で表示する。 食塩相当量(g) = ナトリウム(g) × 2.54

第102回・問122「食品に含まれるナトリウムは、食塩相当量ではなく、ナトリウム量として表示する」——誤り。消費者にとって馴染みのある食塩相当量に換算して書かせる、というのが食品表示法の考え方です。

2.54という係数は、NaCl(式量58.5)をNa(原子量23)で割った値です。58.5 ÷ 23 ≒ 2.54。丸暗記より、この割り算を覚えたほうが忘れません。

期限表示:賞味期限と消費期限

賞味期限 消費期限
意味 おいしく食べることができる期限。過ぎたらすぐ食べられなくなるという意味ではない 期限を過ぎたら食べないほうがよい期限
表示方法 3ヶ月を超えるもの→年月で表示
3ヶ月以内のもの→年月日で表示
すべて年月日で表示
対象食品 スナック菓子、カップ麺、缶詰など品質の劣化が遅いもの 弁当、サンドイッチ、生麺など品質の劣化が急速なもの、生鮮食品

消費期限がすべて年月日なのは、劣化が速いからです。1日ずれたら危ないものに「年月」だけ書いても意味がありません。「劣化のスピード→表示の細かさ」という因果で押さえると、どちらがどちらか迷わなくなります。

国試ではこう問われる

① 法律の出どころ・所管

第101回・問124(3法統合)、第106回・問130(内閣総理大臣が基準を定める)、第98回・問229(JAS法ではない)。制度の成り立ちを聞く問題が意外と多いのが食品表示法の特徴です。

② 特定原材料の顔ぶれと品目数

第100回・問231、第105回・問229、第106回・問130。たこ・栗・バナナといった「準ずるものですらない/推奨どまり」の品目を混ぜてくるのが定番です。現在は9品目(くるみ・カシューナッツを含む)。

③ キャリーオーバーの例外

第98回・問229、第100回・問231。添加物の表示免除は効かない。ただし量り売り・対面販売は別。ここは食品添加物の表示ルールと行き来しながら覚えてください。

④ 乳児のアレルギー

第98回・問229。鶏卵40%・卵白のタンパク質。

⑤ 栄養成分表示

第102回・問122。食塩相当量で表示する。

なお、期限表示そのものは直近15年の国試では単独で問われていません。ただし実務の指導で必ず使う知識ですし、リスクコミュニケーションの単元で「賞味期限を過ぎたら危険」という思い込みの例として出てきます。食品安全基本法とリスク分析と一緒に読むと定着します。

まとめ

  • 食品表示法は2015年施行。JAS法・食品衛生法・健康増進法の表示規定を統合して一元化した。基準を定めるのは内閣総理大臣(消費者庁)
  • 特定原材料は「そらにこたえがアレルギー」+くるみ+カシューナッツの9品目(くるみは2023年追加・2025年4月完全施行、カシューナッツは2026年4月追加・経過措置は2028年3月末まで)
  • 特定原材料に準ずるものは20品目。2024年にマカダミアナッツ追加・まつたけ削除、2026年にピスタチオ追加(カシューナッツは特定原材料へ)
  • 特定原材料はキャリーオーバー・加工助剤でも表示義務あり。含有量が微量でも必ず表示。例外は量り売り・対面販売
  • アレルギー表示に「5%以上」のような下限はない(5%は遺伝子組換え食品の話)
  • 乳児の食物アレルギーは鶏卵が約40%で最多、原因は卵白のタンパク質
  • アレルギー様食中毒はIgE非依存。赤身魚のヒスチジン→ヒスタミン
  • 栄養成分表示の義務は熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5項目。食塩相当量 = Na × 2.54
  • 賞味期限=おいしく食べられる期限(3ヶ月超は年月)、消費期限=食べないほうがよい期限(すべて年月日)

次は食品安全基本法とリスク分析|食品安全委員会は何をする組織かを読んでみてください。食品衛生の法的規制の、もう1本の柱です。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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