食品機能と食品衛生

油脂の変質試験5つの違い|経時変化で覚える【薬剤師国家試験】

油脂の変敗のマインドマップ
油脂の変敗のマインドマップ

酸価・ヨウ素価・過酸化物価・チオバルビツール酸(TBA)試験値・カルボニル価。5つを名前と定義で丸暗記しようとすると、必ず混ざります。

混ざらない覚え方は1つだけです。時間が経つとどう動くかで並べ替える。

  • 上がるもの……酸価、TBA試験値、カルボニル価
  • 下がるもの……ヨウ素価
  • 上がってから下がるもの……過酸化物価

この3分類が言えれば、必須問題は図を見るだけで取れます。なぜそう動くのかは、前の記事の反応機構がそのまま答えになっています。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

結論のグラフ|これ1枚が本体

5つの変質試験の経時変化
5つの変質試験の経時変化

横軸が時間、縦軸が測定値です。

  • 灰色の線(酸価)……初めからどんどん上がる
  • 青い線(ヨウ素価)……右下がり。「初めの物質だから」
  • 赤い線(過酸化物価)……山なり。「中間体だから」
  • 黒い線(TBA試験値・カルボニル価)……あとからじわじわ上がる

「初めの物質は減る、中間体は山を作る、最終産物は増える」——これだけです。

① 酸価(AV)|上がる

酸価のイメージ
酸価のイメージ

定義:油1 gを中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)のmg数

測っているのは遊離脂肪酸のCOOHです。油脂が加水分解されると脂肪酸が切り出され、そのCOOHをKOHで中和する。その中和に必要なKOHのmg数が酸価です。

なぜ上がるのかが少し理屈っぽいので、そこだけ丁寧に。

変敗が進むと、鎖が切れて長鎖脂肪酸が低級脂肪酸(短い脂肪酸)に変わっていきます。同じ1 gでも、分子が小さいほど分子数(モル数)は多くなる。COOHの数が増えるので、中和に必要なKOHの量も増える。だから酸価は上がります。

「分解が進む → 短い脂肪酸が増える → COOHが増える → KOHがたくさん要る」。この順で思い出してください。

② ヨウ素価(IV)|下がる

ヨウ素価のイメージ
ヨウ素価のイメージ

定義:油100 gに付加するヨウ素(I₂)のg数

測っているのは二重結合の数(不飽和度)です。ヨウ素は二重結合に付加するので、二重結合が多いほどヨウ素をたくさん使う=ヨウ素価が高い。

新しい油は二重結合が残っているのでヨウ素価が高く、変敗が進むと二重結合が壊れていくのでヨウ素価は下がります。

第103回(問123)「不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する」→ 誤り。下がります。

第107回(問128)「コーン油は、オリーブ油よりも開封直後のヨウ素価が大きいことから、飽和脂肪酸を多く含むことがわかる」→ 誤り。ヨウ素価が大きいのは不飽和脂肪酸が多いということです。

ヨウ素価だけが下がる。5つの中で1つだけ逆向きなので、ここが必ず狙われます。

③ 過酸化物価(POV)|上がってから下がる

定義:試料1 kgあたりに、ヨウ化カリウムから遊離するヨウ素のミリ当量数(meq/kg)

過酸化物価の測定
過酸化物価の測定

測っているのはヒドロペルオキシド(ROOH)です。

ヒドロペルオキシドは連鎖反応の中間体でした。反応が進むにつれてまず増え、その後マロンジアルデヒドやカルボニル化合物に分解されていくので、やがて減ります。だから山なりになる。

測定の原理も一度は追っておいてください。

  1. 油にヨウ化物イオン(I⁻)を加える
  2. 過酸化物がI⁻を酸化してI₂(ヨウ素)が遊離する……R-OOH + 2I⁻ + 2H⁺ → R-OH + I₂ + H₂O
  3. 遊離したI₂をチオ硫酸ナトリウムで滴定する……I₂ + 2S₂O₃²⁻ → S₄O₆²⁻ + 2I⁻

つまり、過酸化物が多いほど遊離するヨウ素が多く、滴定に必要なチオ硫酸ナトリウムも多くなる。

第103回(問123)「酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する」→ 誤り。増加します。

ここは「増える/減る」を逆にしただけのひっかけです。過酸化物 → I₂が遊離 → チオ硫酸Naをたくさん使う、という当たり前の流れを一度自分で書いておけば引っかかりません。

④ チオバルビツール酸(TBA)試験値|上がる

チオバルビツール酸とマロンジアルデヒドの反応
チオバルビツール酸とマロンジアルデヒドの反応

測っているもの:マロンジアルデヒド

油1 g + チオバルビツール酸 → 赤色色素 → 吸光度で測定

マロンジアルデヒド(OHC-CH₂-CHO)にチオバルビツール酸が2分子つながって赤色色素になり、その吸光度を測ります。マロンジアルデヒドは分解の先にできる物質なので、変敗が進むほど増えます。

⑤ カルボニル価(CV)|上がる

測っているもの:カルボニル化合物の総量

油1 g +「〜ヒドラジン」→〜ヒドラゾン(赤色)→ 吸光度で測定

こちらも分解産物なので変敗で増加します。TBA試験値と動き方は同じです。

測定法の対比で覚えると楽です。TBAはチオバルビツール酸で赤色、カルボニル価はヒドラジンでヒドラゾンの赤色。どちらも吸光度で測ります。

5つを1枚の表に

試験 測っているもの 定義・試薬 経時変化
酸価 遊離脂肪酸(COOH) 油1 gの中和に必要なKOHのmg数 ↑
ヨウ素価 二重結合(不飽和度) 油100 gに付加するI₂のg数 ↓
過酸化物価 ヒドロペルオキシド 1 kgあたり遊離するヨウ素のmeq数。チオ硫酸Naで滴定 ↑のち↓
TBA試験値 マロンジアルデヒド チオバルビツール酸→赤色→吸光度 ↑
カルボニル価 カルボニル化合物 ヒドラジン→ヒドラゾン(赤色)→吸光度 ↑

単位のひっかけにも注意してください。酸価は「油1 g」、ヨウ素価は「油100 g」、過酸化物価は「油1 kg」と、基準にする量が全部違います。

国試ではこう問われる

この単元は、グラフを読ませる問題が本命です。

第105回・必須問題(問16) 「図の1〜5は、油脂の自動酸化が始まってから停止反応に至るまでの酸価、過酸化物価、カルボニル価、チオバルビツール酸試験値及びヨウ素価の経時変化を示している。過酸化物価はどれか。1つ選べ」

→ 山なりの曲線を選ぶだけ。冒頭のグラフが頭に入っていれば5秒です。

第107回(問128) コーン油とオリーブ油を保存し、過酸化物価(meq/kg)と酸価(mg/g)を測定したグラフを読ませる問題。「測定値Aは過酸化物価、測定値Bは酸価である」を判定させます。山なりがA(過酸化物価)、単調増加がB(酸価)という同じ知識です。

第103回(問123) 記述問題。ヨウ素価の向き、チオ硫酸Naの増減、ビタミンEの効果が問われました(本文中で解説)。

3回とも「経時変化でどう動くか」に帰着します。グラフ1枚を覚えることが、そのまま得点になる単元です。

まとめ

  • 上がる=酸価・TBA試験値・カルボニル価/下がる=ヨウ素価/上がってから下がる=過酸化物価
  • 酸価……油1 gを中和するKOHのmg数。遊離脂肪酸のCOOHを測る。分解で低級脂肪酸が増えるとモル数が増えるので上がる
  • ヨウ素価……油100 gに付加するI₂のg数。二重結合の指標なので変敗で下がる。5つで唯一の右下がり
  • 過酸化物価……1 kgあたり遊離するヨウ素のmeq数。ヒドロペルオキシド(中間体)を測るので山なり。チオ硫酸ナトリウムで滴定し、過酸化物が多いほど滴定量は増える
  • TBA試験値……マロンジアルデヒドをチオバルビツール酸で赤色にして吸光度測定。増加
  • カルボニル価……カルボニル化合物をヒドラジンでヒドラゾン(赤色)にして吸光度測定。増加
  • 第105回の必須問題はグラフから過酸化物価を選ぶだけ、第107回もグラフ読み取り。図を覚えるのが最短ルート

次は食品中の発がん物質|N-ニトロソ化合物・アクリルアミド・ヘテロサイクリックアミンを読んでみてください。加熱でできる発がん物質の話は、さきほどのメイラード反応とそのままつながります。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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