衛生の感染症と予防のの分野についてまとめました。
どの感染症が何類(1~5類と新興、再興などに指定されているか)に属するか、そしてその特徴を理解するのがポイントです。
マインドマップで体系的に押さえましょう。
Contents
感染症法とは??
感染症法は「感染症の予防と感染症の患者に対する医療に関する法律」です。人権を配慮し、国際的な感染症の動向を把握した上で感染症対策を行っています。
感染症法で定められている具体的な対策に入院勧告制度や病原体の管理についての項目があります。疾患によって原則入院などの対応が必要なものがあります。これに関して、人権を尊重した上で入院勧告をする制度があります。また、病原体は、生物テロに利用される可能性もあるため、病原体の保有に関して禁止、許可、届け出制、基準の厳守に4分類しています。
感染症の分類
感染症には色々な分類がありますが感染症法では重症度や感染力の強さから
- 1類~5類の5種類
- 新感染症
- 指定感染症
- 新型インフルエンザ等感染症
の8つに分類しています。
また
- 検疫法で指定される検疫感染症
- WHOが定義している新興感染症、再興感染症
という複数の分類分けがあります。
新興感染症とは??
新興感染症はWHOで1970年以降に新たに発見された病原体or不明だった病原体により公衆衛生上、問題となる新感染症としています。
新興感染症には
- レジオネラ症
- カンピロバクター感染症
- 腸管出血性大腸菌感染症
- クリプトスポリジウム
- エボラ出血熱
- E型、C型肝炎
- AIDS
- SARS,MERS
- 鳥インフルエンザ
- 成人T細胞白血病
などがあります。
再興感染症とは??
再興感染症は既知の感染症で発生数が減少し、公衆衛生上問題にならなくなったが、近年再び出現増加しているor将来的に問題となる可能性のある感染症を指します。
- 結核
- デング熱
- マラリア
- 劇症型溶血性レンサ球菌感染症
が該当します。
検疫感染症とは??
検疫感染症は「国内に存在せず、流行したらやばい感染症を海外から持ち込まないように事前に予防したい」ということで検疫法で指定されます。
該当するものはゴロで覚えましょう。
まじでまて!ちっちゃい新型の鳥、くるな!
- ま:MARS
- じ:ジカ熱
- ま:マラリア
- て:デング熱
- ち:チクングニア熱
- い:1類感染症
- 新型:新型インフルエンザ
- 鳥:鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)
- くるな:コロナ(COVID19)
COVID19は2020年2月より検疫感染症と指定感染症の対象です。検疫感染症に指定することで、空港などで感染が疑わしい人には検査や診察、消毒など指示できるようになります。水際対策を強化できるようになるので急きょ、検疫感染症の指定をすることになりました。
新感染症
新感染症はヒトーヒト伝染し、かつ未知の感染症で伝染力や重篤度から危険性が極めて高いとされるものです。
過去の例で言うと、SARSは2003年に新感染症に指定されています。その後1類感染症を経て、現在は2類感染症に位置づけられています。
指定感染症
指定感染症は1~3類とインフルエンザ等感染症に分類されていないが、既知の感染症で1~3類に準じた対応が必要なものと定義されます。直近ではCOVID19が指定され、法的な裏付けができたため、
- 患者の入院措置
- 公費による医療提供
- 診断した医師への報告義務(全体数の把握に役立つ)
ができるようになりました。
新型インフルエンザ等感染症
新型インフルエンザ等感染症は1~5類の型に当てはめるだけでは十分な対応ができないことから新たに設けられたものです。
主に
- 新型インフルエンザ
- 再興型インフルエンザ
の2つに分けられます。
新型インフルエンザは名前の通り新型で急速な流行を起こす可能性のあるものです。逆に再興型インフルエンザは過去に世界的規模で流行したが落ち着いていたもので、再び再興するようになるものです。アジアかぜ(H2N2亜型)などが想定されます。
新型インフルエンザ等感染症に指定することで必要に応じた入院措置、食品関連の職業への就業規制、感染防止のための協力(健康状態の報告、外出自粛など)の対応が取れるようになります。
1類感染症
1類感染症は危険性が極めて高く、原則入院が必要です。
図に記載のゴロで覚えましょう。
他にも
南米の1番偉いペットはくま
- 南米:南米出血熱
- 1番:1類感染症
- え:エボラ出血熱
- ラ:ラッサ熱
- ペ:ペスト
- と:痘瘡(天然痘)
- ク:クルミアコンゴ出血熱
- ま:マールブルグ病
1類感染症はウイルス性と細菌性に分けられます。
ウイルス性は出血熱と痘瘡があります。
出血性は
- エボラ出血熱
- クリミア・コンゴ出血熱
- 南米出血熱
- マールブルグ病
- ラッサ病
があります。症状は発熱と出血で致死率が高いのが特徴です。
痘瘡(天然痘)は、急激な発熱、頭痛の後に発疹が生じます。1980年に根絶宣言されており、現在世界中で新規患者の発生は有りません。しかし、生物テロの危険性があるために1類感染症に指定されています。
ペストは1類感染症で唯一の細菌性です。ペスト菌がノミを介して人間に感染を起こします。
2類感染症
2類感染症は危険性が高く、必要に応じて入院措置が取られます。
上の図のゴロ以外にも
2hr時差ボケ
- 2:2類感染症
- h:H5N1、H7N9(鳥インフルエンザ)
- じ:ジフテリア
- さ:SARS(MERSも)
- ぼ:ポリオ
- け:結核
があります。
2類感染症にもウイルス性と細菌性があります。
ウイルス性
ウイルス性はSARS、MERS、ポリオがあります。
SARSは重症急性呼吸器症候群のことでSARSコロナウイルスにより感染します。中国で2002年に発生し、飛沫感染と接触感染により800人弱がなくなっています。同じコロナウイルスが原因である中東呼吸器症候群:MERSはアラビア半島で発生したラクダが宿主の感染症です。MERSは検疫感染症に指定されています。
ポリオは経口感染により咽頭や小腸の粘膜で増殖し、中枢神経系の運動神経ニューロンを破壊することで麻痺が生じます。日本では現在、不活化ワクチンが導入されており、新規感染者の報告者はいません。
細菌性
細菌性には結核とジフテリアがあります。
結核は結核菌という抗酸菌が病原体で空気感染(飛沫核感染)のより広がります。日本での罹患率、死亡率は減少傾向にありますが、欧米に比べるとまだ高い水準にあります。理由の一つには高齢化があると考えられます。結核患者の7割が60歳以上です。加齢により免疫が低下し結核が発症します。
世界的には、HIVの拡大に伴い、結核罹患者が増加傾向にあります。
結核の治療には多剤併用療法をします。そのためコンプイアンス向上にDOTS(直接服薬確認治療)が重要です。
結核の治療とDOTSはこちらのページにまとめてあるので確認してください。
ジフテリアはジフテリア菌により、飛沫感染します。上気道粘膜疾患でジフテリア毒素を排出して筋力低下、麻痺、心不全などをきたして無くなる場合もあります。日本ではDPT-IPV混合ワクチンの予防接種により年間数例見られる程度に押さえられています。
3類感染症
3類感染症は危険性は高くないですが特定の職業への就業で集団感染を起こしやすいものです。そのため感染者や無症状病原体保有者が感染拡大しないように、食品製造業などの特定業務への就業制限が設けられています。
覚え方は図のゴロ以外に
これチーフ責任出血大サービス
- これ:コレラ
- チーフ:腸チフス
- 責任:細菌性赤痢
- 出血大:腸管出血性大腸菌感染症
- サー:三類感染症
細菌性赤痢は赤痢菌の経口感染で発症します。最近は減少していて罹患者は200人前後です。
コレラもコレラ菌の経口感染で発症します。患者の糞便で汚染された水や食品を接種することで感染します。年間数十人が感染しています。コレラ菌が小腸の微絨毛に定着するとコレラ毒素を産生し、米のとぎ汁様の水溶性下痢が生じます。脱水症状を防ぐために電解質を含む水分の摂取が大切です。
腸チフス、パラチフスはチフス菌、パラチフス菌により経口感染します。両方とも患者数は少なく近年の患者数は50人未満です。
腸管出血性大腸菌(O-157)はこちらのページにまとめてあります。
4類感染症
4類感染症は動物→人への感染で、ヒトーヒト感染は起こりません。そのため媒介動物の輸入が禁止されています。
ウイルス性
重症熱性血小板減少症候群
重症熱性血小板減少症候群はSFTSウイルスが原因でマダニに噛まれることが原因です。症状は発熱と消化器症状です。特異的な治療やワクチンは有りません。
ウエストナイル熱
ウエストナイル熱はウエストナイルウイルスを蚊が媒介して感染します。不顕性なことが多く、症状はインフル様の発熱や頭痛が生じます。
デング熱
デング熱はデングウイルスをヒトスジシマ蚊が媒介することで発症します。一過性の熱疾患で、熱帯、亜熱帯地域で広く見られます。検疫感染症であることを押さえましょう。
ジカ熱
ジカ熱はデング熱と同じくヒトスジシマ蚊(ネッタイシマ蚊も)により媒介されます。症状はデング熱に似ていますが症状は軽めです。妊婦の感染により新生児の小頭症のリスクが上がるので注意が必要です。
ジカ熱も検疫感染症に指定されているのでデング熱とセットで押さえておきましょう。
チクングニア熱
チクングニア熱も蚊が媒介する感染症で検疫感染症に指定されています。
日本脳炎
日本脳炎は日本脳炎ウイルスを蚊が媒介します。現在は予防接種(不活化ワクチン)により激減し毎年5人程度の感染者数です。症状は発熱や頭痛、痙攣などの中枢症状が特徴です。
狂犬病
狂犬病は狂犬病ウイルスが感染した犬など(犬以外でもなる)の咬傷から唾液を介して伝染する場合が多く、発症すると死亡率はほぼ100%と危険です。
世界中で毎年5万人がなくなっている感染症です。日本での感染はないですが海外で感染するケースがあるので渡航前に狂犬病ワクチンの事前接種が大切です。ウイルス自体は弱く。噛まれたら傷口を石鹸水でよく洗い消毒することで大半が死滅します。また潜伏期間が1~2ヶ月と長いので感染直後からワクチンを連続的に接種することで発症を回避できます。
鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9以外)
鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスが鳥類に感染するもので、ヒトのインフルエンザとは異なります。H5N1とH7N9は2類感染症かつ検疫感染症なので必ず押さえましょう。それ以外が4類感染症です。
日本ではヒトに感染した例はありませんが、アジア、中東などでは報告されています。
A型肝炎
A型肝炎はピコルナウイルス科のA型肝炎ウイルス(HAV)が病原体です。
汚染された水などの経口感染で感染し、症状は発熱や黄疸、肝腫大など見られます。1~2ヶ月くらいで回復し、予後は良好です。そのため治療は対症療法が行われます。
E型肝炎
E型肝炎はE型肝炎ウイルス(HEV)が原因です。汚染水や豚レバーの生食、シカ、イノシシなどの野生動物の肉を介して感染します。症状は悪心、嘔吐などを伴う急性肝炎ですが自然治癒します。そのためA型肝炎と同じく対症療法を行います。
細菌性
リケッチア
細菌性にはツツガムシ病があります。ツツガムシ病はリケッチアという病原体をダニの一種であるツツガムシが媒介することで感染します。症状は発疹、発熱、刺し口のあとが特徴です。森林作業や山菜とりなどの最中に感染することが多いです。
原虫、寄生虫
マラリア
マラリアはマラリア原虫をハマダラ蚊が媒介することで感染します。マラリア原虫は赤血球に感染にし、赤血球が破壊される際に毒素が放出されることで発熱や悪寒、脾腫などの症状が生じます。
世界のマラリア患者数は年間2億人で2015年には44万人もの人が死亡したとされています。
ハマダラカは様々な病原体を媒介しますが多くは赤道周辺にいます。近年の地球温暖化に伴い、蚊の生息地域の拡大が世界的に問題となっています。
エキノコックス
エキノコックスは寄生虫で、キツネやイヌに寄生します。エキノコックスは
キツネが虫卵を排泄
→ネズミが食べて幼虫が寄生
→キツネが感染したネズミを捕食
→キツネが虫卵を排泄。。。
という生活環があります。人がこの虫卵を経口摂取することで腸で幼虫になり主に肝臓に寄生し増殖し、慢性の肝疾患を引き起こします。
5類感染症
5類感染症は国が感染症の発生動向を調査し、必要な情報を国民や医療関係者に提示することで感染の発生、蔓延を防止すべきものでヒトーヒト感染します。
5類感染症は全数把握するものと定点把握するものがあります。(1~4類は全数把握)
全数把握するものには
麻疹、風疹、AIDS、クロイツフェルト・ヤコブ病、B型、C型肝炎などがあります。
ウイルス性
後天性免疫不全症候群
後天性免疫不全症候群(AIDS)はレトロウイルスのヒト免疫不全ウイルス(HIV)が原因です。
- 性的接触
- 血石製剤由来
- 母子感染
を介して感染します。
日本では加熱処理をしなかった非加熱血液凝固因子製剤により見られました。また男性感での同性間の性的接触が割合として多いのが特徴です。
ウイルス自体は消毒薬や加熱に弱く、体外では弱いため感染力も弱いです。
AIDSの治療、病態はこちらにまとめてあります。
B型肝炎
B型肝炎はヘパドナウイルス科のB型肝炎ウイルス(HBV)でDNAウイルスが原因です。
ヘパ→肝 ドナ→DNAウイルス
で覚えましょう。
- 血液、体液
- 主に経産道感染による母子感染
- 性行為感染
などがあります。
母子感染によるキャリア拡大を防ぐために、スクリーニング陽性の母親からの出生児に抗Hbsヒト免疫グロブリン(HBIG)とB型肝炎ワクチンの接種が行われます。
C型肝炎
C型肝炎ウイルスはフラビウイルス科のRNAウイルスです。
血液を介して感染します。C型肝炎は70~80%が慢性化し、肝硬変、肝細胞がんへ進行することがあります。
HCV抗体スクリーニングの導入により、輸血による感染は激減しています。
麻疹
麻疹は麻疹ウイルスが空気感染(飛沫核感染)で感染します。症状はかぜのような症状が現れます。肺炎や中耳炎を合併しやすくまれに脳炎が発症します。一度感染すると一生免疫持続します。ワクチンが有効な予防法で、弱毒性生ワクチンの2回接種が行われています。
風疹
風疹ウイルスというRNAウイルスが飛沫感染することで起こります。妊婦が風疹に感染すると、胎盤を通して、子供に難聴や心奇形、白内障などの先天性風疹症候群が見られます。
予防でワクチンが導入されており、
- 生後12ヶ月~24ヶ月未満
- 5歳上7歳未満
の2回、弱毒生ワクチンの接種が行われます。
インフルエンザ
インフルエンザはオルトミクソウイル科のRNAウイルスです。
飛沫感染で拡大します。A型インフルエンザは16種類のHAと9種類のNAがあり、その組み合わせにより様々な亜型があります。1918年に世界的に流行したスペインかぜはH1N1という型です。
現在は予防接種で不活化ワクチンであるインフルエンザHAワクチンが使用されています。
水痘
水痘はヘルペスウイルス科の水痘・帯状疱疹ウイル(DNAウイルス)が原因です。
空気感染(飛沫核感染)で感染していきます。感染力が強く小児にかかることが多い予後良好な感染症です。しかし、成人がかかると重症化しやすくなります。
手足口病
手足口病はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスにより起こります。小児によく見られる疾患です。
症状は、感染数日後に口の中や手の平、足底などに2~3mmの水疱性発疹ができます。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは手足口病と同じく、コクサッキーウイルスが原因です。症状は発熱と口腔粘膜の水疱性発疹が特徴で、小児の急性ウイルス性咽頭炎の原因になります。
細菌性
破傷風
破傷風は破傷風菌が外傷部から感染することで起こります。
嫌気性の環境下で外毒素を放出し、中枢の運動神経細胞において抑制性シナプスを遮断します。これにより筋肉が硬直しえびぞり状態になります。現在はDPT-IPV混合ワクチンとして予防接種しているので、感染はかなり押さえられています。
百日咳
百日せきは飛沫感染により感染します。痙攣性の咳発作を特徴とする急性気道感染症です。破傷風と同じくDPT-IPVワクチン混合ワクチンによる予防接種が行われています。
梅毒、クラミジア
梅毒とクラミジアは性感染症のところにまとめてあるので、薬物治療と疫学をセットで覚えましょう。
原虫
クリプトスポリジウム
クリプトスポリジウムは原虫で牛や豚などの動物の腸管に寄生しています。塩素消毒に対して抵抗性を示すので、予防には煮沸消毒が有効です。
汚染水などの経口摂取で感染し、下痢や腹痛、発熱、嘔吐が見られます。数日から2~3週間で自然治癒することが多いです。
その他
プリオン病
プリオン病は、核酸(DNA,RNA)を持たない、耐熱性の異常プリオンタンパク質が原因です。
- クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)患者からの角膜や硬膜移植
- 手術器具の汚染
などの医療性感染例が報告されています。
プリオン病には
- 動物のプリオン病→牛のBSE
- ヒトのプリオン病→クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)
があり、5類感染症になっているのはクロイツフェルト・ヤコブ病です。
現在問題になっているのは、変異型CJDで牛海綿状脳症(BSE)の病原体である異常プリオンがヒトに感染したものです。
異常プリオンは感染能があり、免疫応答がなく、極めて安定という特徴のため、脳内に蓄積して脳神経細胞を障害します。これにより、脳の海綿(スポンジ)状変性が起こり、行動異常や歩行障害などが起こり、急速に認知症が進行します。その後1、2年で全身衰弱、呼吸不全、肺炎などで死亡します。
現在は治療法が確立されていません。