
カビ毒(マイコトキシン)は、成分名と産生菌属と毒性を組み合わせて問われます。成分名が似たものだらけなので、まず4つの属を覚え、そこから成分をぶら下げるという順番で攻めるのが確実です。
そしてもう1つ、食品衛生法で残留基準値が設定されている3成分は単独で頻出です。ここは何度も出題されているので、成分と対象食品をセットで固定してください。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
カビ毒の共通のふるまい

- 食品にカビがつく
- カビが増殖してカビ毒を産生する
- 加熱するとカビ自体は死滅する
- しかし加熱後も食品に毒素は残る
毒素型食中毒の黄色ブドウ球菌とまったく同じ構図です。菌を殺しても毒は消えない。だから「カビの生えた部分を取り除けば食べられる」という発想は通用せず、基準値で管理するしかありません。
まず4つの属を覚える

ペニシリンで 明日には ふさふさ、グラビアも
| 語呂 | 属 |
|---|---|
| ペニシリンで | ペニシリウム属 |
| 明日には | アスペルギルス属 |
| ふさふさ | フサリウム属 |
| グラビアも | クラビセプス属 |
属名そのものを覚えるというより、属名から「どの成分があったか」を思い出せるようにするのが目的です。各属につき2〜3成分ぶら下がるだけなので、4つの引き出しを作れば全体が見渡せます。
残留基準値が設定されている3成分
ここが最頻出です。食品衛生法で残留基準値が定められているカビ毒のうち、国試で問われるのは次の3つ。
| 成分 | 対象食品 |
|---|---|
| 総アフラトキシン | 食品全般 |
| デオキシニバレノール | 小麦 |
| パツリン | りんご加工品(りんご果汁の清涼飲料水) |
(このほかに乳のアフラトキシンM₁にも基準値がありますが、国試で問われているのは上の3つです。)
3成分が3つの異なる属にまたがっているのがやっかいなところです。アフラトキシン=アスペルギルス、デオキシニバレノール=フサリウム、パツリン=ペニシリウム。
そしてアフラトキシンについては「総アフラトキシン」で基準が設定されていることに注意してください。アフラトキシンにはB₁・B₂・G₁・G₂などがあり、それらを合わせて「総アフラトキシン」と呼びます。「アフラトキシンB₁のみに基準値がある」は誤りで、実際にそのまま誤答選択肢として出題されています。
アスペルギルス属

明日、油、捨てておくれ
| 語呂 | 成分 |
|---|---|
| 明日 | アスペルギルス |
| 油 | アフラトキシン |
| 捨てて | ステリグマトシスチン |
| おくれ | オクラトキシン |
アフラトキシン
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 種類 | アフラトキシンB₁・B₂・G₁・G₂など → 合わせて総アフラトキシン |
| 毒性 | 強力な発がん性(肝がん)、肝毒性 |
| 産生菌 | Aspergillus flavus |
| 原因 | ピーナッツに発生したカビ |
| 検出 | HPLC + 蛍光検出器によるアフラトキシンの蛍光検出 |

発がんの機序も頻出です。アフラトキシンB₁ → (P450によるエポキシ化) → 活性体(エポキシド) → 発がん性。CYP3A4による代謝活性化でエポキシドが生じ、それがDNAに結合します。二次発がん物質の代表例です。
「アフラ」と「油」で語呂に組み込まれていますが、実際の原因はピーナッツ(落花生)です。輸入ピーナッツの検査が行われています。
その他のアスペルギルス属
| 成分 | 毒性 |
|---|---|
| ステリグマトシスチン | 肝毒性・発がん性(肝がん) |
| オクラトキシン | 肝毒性、腎毒性、発がん性 |
オクラトキシンだけ腎毒性も持つのが区別のポイントです。
ペニシリウム属

しりとりで「ペニシリン」って言って、パッツンとりんごジュース一気
| 語呂 | 成分 |
|---|---|
| しりとり | シトリニン |
| ペニシリン | ペニシリウム属 |
| パッツン | パツリン |
| りんごジュース | パツリンの対象食品 |
| 成分 | 内容 |
|---|---|
| シトリニン | 青カビ + 米 → 黄変(黄変米) → 腎毒性 |
| パツリン | りんごジュースが汚染されやすい。神経障害。残留基準値あり |
シトリニン = 黄変米 = 腎毒性の3点セットです。米が黄色くなる現象が「黄変米」で、戦後の輸入米問題として知られています。
パツリンはりんご。語呂の「パッツンとりんごジュース」で、成分と対象食品が同時に入ります。
フサリウム属

ふざけて レバニラ 食ったぞう
| 語呂 | 内容 |
|---|---|
| ふざけて | フサリウム |
| レバニラ | ニバレノール |
| 食ったぞう | 造血機能障害 |
| 成分 | 内容 |
|---|---|
| ニバレノール | 造血機能障害、免疫機能抑制 |
| デオキシニバレノール | ニバレノールが少し修飾されたもの。小麦に対して残留基準値あり |

ニバレノールの症状は放射線被曝に似た症状と表現されます。造血機能が障害される → 免疫機能が抑制されるという因果で並べると覚えやすくなります。
フサリウム属は小麦の赤カビの原因菌で、そこからデオキシニバレノールに小麦の基準値があるという制度につながります。
クラビセプス属

チカチカ LEDで クラクラ
| 語呂 | 内容 |
|---|---|
| チカチカ | 知覚障害 |
| LED | エルゴタミン・エルゴメトリン |
| クラクラ | クラビセプス |
| 成分 | 毒性 |
|---|---|
| エルゴタミン、エルゴメトリン | 知覚障害、子宮平滑筋収縮 |
クラビセプス属は麦角菌です。だから麦角アルカロイド——エルゴタミン(片頭痛治療薬)、エルゴメトリン(子宮収縮薬)が出てきます。
薬として使われているものが、そのままカビ毒でもあるという構図は、植物性自然毒のコルヒチンと同じです。麦角だから子宮平滑筋収縮もある、と関連づけて覚えてください。
4属のまとめ表
| 属 | 成分 | 毒性 | 残留基準値 |
|---|---|---|---|
| アスペルギルス属 | アフラトキシン(B₁・B₂・G₁・G₂) | 肝がん・肝毒性。P450でエポキシ化→活性体 | 総アフラトキシンに食品全般 |
| ステリグマトシスチン | 肝毒性・発がん性 | — | |
| オクラトキシン | 肝毒性・腎毒性・発がん性 | — | |
| ペニシリウム属 | シトリニン | 腎毒性(黄変米) | — |
| パツリン | 神経障害 | りんご加工品 | |
| フサリウム属 | ニバレノール | 造血機能障害・免疫機能抑制 | — |
| デオキシニバレノール | 同上 | 小麦 | |
| クラビセプス属 | エルゴタミン・エルゴメトリン | 知覚障害・子宮平滑筋収縮 | — |
国試ではこう問われる
① 残留基準値のある成分
第101回・問20(必須)「食品衛生法に基づき、リンゴジュースについて基準値が定められているカビ毒はどれか」→ パツリン。誤りの選択肢はアフラトキシンB₁・ステリグマトシスチン・エルゴタミンでした。必須問題でそのまま1行です。
② マイコトキシンの毒性の組合せ
第104回・問121「マイコトキシンに関する記述のうち、誤っているのはどれか」では、
- 「ステリグマトシスチンは、肝毒性を示す」→ 正しい
- 「シトリニンは、腎毒性を示す」→ 正しい
- 「ニバレノールは、造血機能障害を示す」→ 正しい
- 「パツリンは、食品中の最大基準値が設定されている」→ 正しい
- 「アフラトキシンのうち、アフラトキシンB₁のみ食品中の最大基準値が設定されている」→ 誤り
正解は最後の1つです。基準は「総アフラトキシン」に設定されている——これがそのまま問われています。この1問で、この記事の毒性の対応表がほぼ全部確認できます。
③ 産生菌と毒性
第110回・問20(必須)「コウジカビ Aspergillus flavus が産生する主要な肝発がん物質はどれか」→ アフラトキシンB₁。シトリニン・パツリン・フモニシンB₁・デオキシニバレノールが誤りの選択肢でした。学名と成分の対応が問われています。
④ 代謝活性化
第108回・問129「アフラトキシンB₁は、シトクロムP450によりエポキシ化されて発がん作用を示す」→ 正しい記述。代謝活性化の単元からも同じ内容が出題されます。
⑤ 汚染されやすい食品
第100回・問123は、平成20年の事故米事件を題材に「米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか」を問いました。答えはアフラトキシンB₁(とメタミドホス)で、パツリンは誤りの選択肢として置かれています。米=アフラトキシン(およびシトリニンによる黄変米)、りんご=パツリンという対応を逆に使わせる作りです。
第101回・問123では「輸入ピーナッツと同様に、コウジ菌を用いる味噌・醤油についても、食品中のアフラトキシン濃度が重点的に検査されている」が誤りの選択肢として出題されました。味噌・醤油に使うコウジカビ(Aspergillus oryzae)はアフラトキシンを産生しません。アフラトキシンを作るのはAspergillus flavusです。同じアスペルギルス属でも種が違う、という細かい区別を突いています。
まとめ
- カビ毒は加熱でカビ自体は死ぬが、毒素は食品に残る。だから基準値で管理する
- 4属の語呂は「ペニシリンで明日にはふさふさ、グラビアも」——ペニシリウム・アスペルギルス・フサリウム・クラビセプス
- 国試で問われる残留基準値の3成分は、総アフラトキシン(食品全般)/デオキシニバレノール(小麦)/パツリン(りんご果汁の清涼飲料水)。3つの属にまたがる
- アフラトキシンはB₁のみでなく「総アフラトキシン」で基準が設定されている
- アスペルギルス属は「明日、油、捨てておくれ」——アフラトキシン・ステリグマトシスチン・オクラトキシン。アフラトキシンはA. flavusが産生し、ピーナッツが原因。P450でエポキシ化されて肝がんを起こす。検出はHPLC+蛍光検出器
- オクラトキシンだけ腎毒性も持つ
- ペニシリウム属は「しりとりでペニシリン、パッツンとりんごジュース一気」——シトリニン(黄変米・腎毒性)とパツリン(りんご・神経障害)
- フサリウム属は「ふざけてレバニラ食ったぞう」——ニバレノールの造血機能障害・免疫機能抑制。デオキシニバレノールは小麦に基準値
- クラビセプス属(麦角菌)は「チカチカLEDでクラクラ」——エルゴタミン・エルゴメトリンの知覚障害・子宮平滑筋収縮
次は食品衛生(食品の変質・食品添加物)の単元に進みます。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。