栄養

呼吸商と基礎代謝|糖質1.0・脂質0.71の理由とNPRQ・Atwater係数【薬剤師国家試験】

栄養と健康のマインドマップ
栄養と健康のマインドマップ

「エネルギー代謝」は、第100回と第106回でほぼ同じ選択肢が使い回されている単元です。つまり、出題のツボが完全に固定している。

ツボは4つ。

  • 呼吸商(RQ)の式と、糖質1.0・タンパク質0.8・脂質0.71という値
  • Atwater係数(4・9・4)が何を考慮した値なのか
  • 窒素係数6.25はどこから来たのか
  • 基礎代謝「量」と基礎代謝「基準値」の違い

とくに最後の2つは、「似た名前を入れ替えるだけ」で誤り選択肢が作れるので、必ず狙われます。この記事では、なぜその数字になるのかを計算からたどって、丸暗記しなくても出せる状態を作ります。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

呼吸商(RQ):式の向きを間違えない

呼吸商の定義式
呼吸商の定義式

呼吸商 = CO₂排出量 ÷ O₂消費量

分子がCO₂、分母がO₂。第106回で「呼吸商とは、二酸化炭素排出量から酸素消費量を差し引いた値である」という誤り選択肢が出ました。引き算ではなく割り算です。

糖質が1.0になる理由

グルコースの完全燃焼を書いてみます。

C₆H₁₂O₆ + 6O₂ → 6CO₂ + 6H₂O

消費するO₂が6、出てくるCO₂も6。だから 6 ÷ 6 = 1.0。

「糖だけなら同量」。糖質は分子中にすでに酸素を多く持っているので、燃やすのに必要な外からのO₂が少なくて済み、CO₂と同じ数で釣り合います。

脂質が0.71になる理由

ステアリン酸(C₁₇H₃₅COOH)で同じことをやります。

C₁₈H₃₆O₂ + 26O₂ → 18CO₂ + 18H₂O

CO₂が18、O₂が26。18 ÷ 26 ≒ 0.69。

脂質全体の平均でならすと約0.71になります。脂質は分子中の酸素の割合が低いので、燃やすのに大量のO₂が要る → 分母が大きくなる → 呼吸商は1より小さくなる。

タンパク質も同じ理屈で約0.8です。

栄養素ごとの呼吸商
栄養素ごとの呼吸商
栄養素 O₂消費量(1gあたり) CO₂排出量(1gあたり) 呼吸商
糖質 0.75L 0.75L 1.0
タンパク質 0.95L 0.76L 0.8
脂質 2.03L 1.43L 0.71

糖質1.0 > タンパク質0.8 > 脂質0.71。この順番は、分子中の酸素の割合が高い順です。

図の補足:マインドマップの図に「分子中のO₂の割合が低いため」とありますが、正確には「分子中のO(酸素原子)の割合」です。分子式の中にO₂という形で入っているわけではありません。

Atwater係数:4・9・4

Atwater係数 = 物理的に完全燃焼させたときのエネルギーに、消化吸収率と糞尿中への排泄(未利用エネルギー)を考慮して、実際に体が利用できる熱エネルギーの平均値(kcal/g)

栄養素 Atwater係数
糖質 4 kcal/g
脂質 9 kcal/g
タンパク質 4 kcal/g

「4・9・4」。脂質だけが飛び抜けて高い——1gあたりのエネルギーが最大なのは脂質です。

導き方:糖質を完全燃焼させると約4.1kcal/g の熱が出ます。そこに吸収効率(約98%)をかけると、4.1 × 0.98 ≒ 4。この「掛け算をしている」という部分が問われます。

第100回で「糖質、脂質、タンパク質の物理的燃焼価を四捨五入して得られた整数値は、Atwater係数と呼ばれる」という誤り選択肢が出ました。四捨五入しただけではありません。消化吸収率と未利用エネルギーを考慮しています。第106回では逆に、「Atwater係数は、糖質、脂質、タンパク質の物理的燃焼値、消化吸収率及び未利用エネルギーをもとに設定された値である」が正しい記述として出ています。同じ論点を、正・誤ひっくり返して使い回しているわけです。

窒素係数6.25:100 ÷ 16

タンパク質の平均16%が窒素の重量です。だから、

100 ÷ 16 = 6.25

尿中に排泄された窒素の量 × 6.25 = 体内で燃焼したタンパク質の量

タンパク質は代謝されると、窒素がアンモニア → 尿素として尿中に出ます。尿の窒素を量れば、どれだけタンパク質を燃やしたかが逆算できるわけです。

数字を逆にしないこと。「タンパク質100gに含まれる窒素は16g」であって「6.25g」ではありません(第99回の誤り選択肢)。16%と6.25は同じことを逆から言っているだけです。

非タンパク質呼吸商(NPRQ)

何がわかるのか

摂取エネルギーのうち、糖質と脂質がそれぞれ何%を担っているかがわかります。

呼吸商は全体の値なので、そこにはタンパク質の分も混ざっています。タンパク質の分を引き算で取り除けば、糖質と脂質だけの呼吸商が出る——それがNPRQです。

測るもの

NPRQを求めるのに必要な測定
NPRQを求めるのに必要な測定

測定するのは2つだけ。

  1. 呼気(全体のCO₂排出量とO₂消費量)
  2. 尿中窒素量(→ ×6.25でタンパク質量 → タンパク質によるCO₂排出量とO₂消費量)
NPRQの計算の流れ
NPRQの計算の流れ

全体から、タンパク質の分を引く。残ったのが糖質+脂質の分。

NPRQの式
NPRQの式

NPRQ =(全CO₂排出量 − タンパク質燃焼によるCO₂排出量)÷(全O₂消費量 − タンパク質燃焼によるO₂消費量)

呼吸商の式(CO₂ ÷ O₂)の、分子と分母からそれぞれタンパク質の分を引いただけです。

値の読み方

NPRQは0.71〜1.0の範囲に収まります。

この2つの数字、どこかで見ました。脂質の呼吸商0.71と、糖質の呼吸商1.0です。

NPRQ 意味
1.0に近い エネルギーをほぼ糖質でまかなっている
0.71に近い エネルギーをほぼ脂質でまかなっている
0.8くらい 糖質と脂質が混ざっている(割合を計算で出せる)

NPRQの両端が、糖質と脂質の呼吸商そのもの。だから「値から燃焼割合が推定できる」のです。第100回で「非タンパク質呼吸商の値から、脂質と糖質の燃焼割合が推定できる」が正しい記述として出ています。

一方、第106回の「非タンパク質呼吸商は、尿中に排泄される窒素量に窒素係数6.25を乗じて求められる」は誤りです。6.25を乗じて求まるのはタンパク質量であって、NPRQそのものではありません。NPRQは、そこからさらに引き算と割り算をした先にあります。「6.25はタンパク質量まで」と区切って覚えてください。

基礎代謝量と基礎代謝基準値:似た名前の罠

ここが一番よく狙われます。

定義 いつ最大になるか
基礎代謝量(kcal/日) 生きるのに最低限必要なエネルギー代謝量 10代でMAX
基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日) 体重1kgあたりの基礎代謝量 乳幼児(1〜2歳)でMAX

「量」は10代、「基準値」は赤ちゃん。

なぜ基準値は赤ちゃんで最大になるのか。基礎代謝の大きな部分を占めるのは脳のエネルギー消費で、体重に占める脳の割合は赤ちゃんが圧倒的に大きいからです。体は小さいけれど、1kgあたりで見ると最も激しく燃えている。

第106回で「基礎代謝基準値は、男女とも10代で最大となる」という誤り選択肢が出ました。10代で最大になるのは基礎代謝「量」のほうです。第100回では「基礎代謝基準値は、年齢や性別にかかわらず一定である」という誤り選択肢も出ています。

測定条件も押さえます。

  • 早朝空腹時(食事の影響を除く)
  • 安静仰臥位(寝た状態)
  • 快適な室温

「基礎代謝量は安静時エネルギー消費量とも呼ばれる」は誤りです(第100回)。安静時エネルギー消費量(REE)は座位で測り、食事誘発性熱産生なども含むので、基礎代謝量より1割ほど大きくなります。別物です。

推定エネルギー必要量

推定エネルギー必要量 = 基礎代謝量 × 身体活動レベル

第100回・第106回の両方で、正しい記述として出ています。掛け算です。

国試ではこう問われる

回 問われ方 ポイント
第100回・問121 エネルギー代謝(2つ) 正しいのは「NPRQから脂質と糖質の燃焼割合が推定できる」と「推定エネルギー必要量=基礎代謝量×身体活動レベル」。「基礎代謝量=安静時エネルギー消費量」「Atwater係数は物理的燃焼価を四捨五入した整数値」「基礎代謝基準値は年齢・性別によらず一定」は誤り
第106回・問127 エネルギー代謝(2つ) 正しいのは「Atwater係数は物理的燃焼値・消化吸収率・未利用エネルギーをもとに設定」と「推定エネルギー必要量=基礎代謝量×身体活動レベル」。「呼吸商はCO₂排出量から O₂消費量を差し引いた値」「NPRQは尿中窒素量×6.25で求まる」「基礎代謝基準値は10代で最大」は誤り
第99回・問121 タンパク質の栄養価 尿中窒素量からタンパク質の燃焼量を推定できるは正しい。「100g中の窒素は6.25g」は誤り

第100回と第106回を並べると、まったく同じ論点が正・誤を入れ替えて出ているのがわかります。この単元は、上の表の「誤りパターン」を5つ覚えるだけで十分です。

これで衛生Cブロックの「栄養」パートは終わりです。次からは食品衛生——食中毒と食品汚染に入っていきます。

まとめ

  • 呼吸商 = CO₂排出量 ÷ O₂消費量(引き算ではない)
  • 糖質1.0・タンパク質0.8・脂質0.71。分子中の酸素の割合が低いほど、燃やすのにO₂が要るので呼吸商は小さくなる
  • Atwater係数は糖質4・脂質9・タンパク質4 kcal/g。物理的燃焼値に消化吸収率と未利用エネルギーを考慮した値(四捨五入しただけではない)
  • 窒素係数6.25 = 100 ÷ 16(タンパク質の16%が窒素)。尿中N量 × 6.25 = タンパク質量
  • NPRQ =(全CO₂ − タンパクのCO₂)÷(全O₂ − タンパクのO₂)。0.71〜1.0に収まり、糖質と脂質の燃焼割合が推定できる
  • 基礎代謝量は10代でMAX、基礎代謝基準値(体重1kgあたり)は乳幼児でMAX
  • 基礎代謝量の測定条件は早朝空腹時・安静仰臥位。安静時エネルギー消費量とは別物
  • 推定エネルギー必要量 = 基礎代謝量 × 身体活動レベル

次は食中毒の分類と発生件数|細菌性3分類・ウイルス性・寄生虫と最新の発生順位を読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

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