
生体防御因子の2本目です。
活性酸素は、このあと何度も顔を出します。パラコート中毒も、放射線の酸素効果も、化学発がんのプロモーションも、行き着く先は活性酸素です。ここで1本の流れ図を頭に入れておくと、あとの単元が全部つながります。
覚えることは実質、「どの酵素がどの段階を担当し、どの金属を含むか」だけです。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
活性酸素はどこから生まれるか

この図が記事の骨格です。左から右へ、一本道で追ってください。
- ³O₂(三重項酸素=普通の酸素)に、電子が1個入る
- → O₂⁻(スーパーオキシドアニオンラジカル)。ここから活性酸素です
- → H₂O₂(過酸化水素)
- → ・OH(ヒドロキシラジカル)
そして各段階に、それを消す酵素が下向きの矢印で付いています。上の流れを進ませないように、横から水に変える——これが生体防御の全体像です。
3つの酵素と、それぞれが含む金属
ここが出題の本体です。
| 酵素 | 担当する活性酸素 | 反応 | 含む金属 |
|---|---|---|---|
| スーパーオキシドジスムターゼ(SOD) | O₂⁻ | 2O₂⁻ → H₂O₂ + O₂ | Cu・Zn / Mn / Fe のいずれか |
| カタラーゼ | H₂O₂ | 2H₂O₂ → 2H₂O + O₂ | Fe(ヘム) |
| グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px) | H₂O₂ | H₂O₂ → 2H₂O | Se(セレン) |
SOD ― Cu・Zn / Mn / Fe
SODには複数の種類があり、細胞質型はCuとZn、ミトコンドリア型はMnを含みます。「どれか」で押さえておけば十分ですが、Mnが出てくることは覚えておいてください。ミネラルの単元で「マンガンはSODの構成成分」という形でも問われます。
カタラーゼ ― Fe
ヘムを持つ酵素なので鉄です。過酸化水素を、一気に水と酸素に分解します。傷口にオキシドールをかけると泡立つのは、組織のカタラーゼがH₂O₂を分解して酸素を出しているからです。
グルタチオンペルオキシダーゼ ― Se(セレン)
ここだけ金属ではありません。セレンは非金属(半金属)です。だから引っかけとして使いやすく、実際によく問われます。
「GSH-Px = セレン」は、セレンの欠乏症(克山病=心筋症)とセットで覚えると定着します。抗酸化に必要なミネラルが足りないと心筋がやられる、という筋が通るからです。
フェントン反応とヒドロキシラジカル ― なぜ「最強」なのか
H₂O₂が無事に水になってくれればいいのですが、Fe²⁺があると横道にそれます。
H₂O₂ + Fe²⁺ → ・OH + OH⁻ + Fe³⁺
これがフェントン反応です。できるヒドロキシラジカル(・OH)が、活性酸素のなかで最も反応性が高い——つまり最強の毒です。
なぜ最強かというと、選ばないからです。反応性が高すぎて、ぶつかった相手(DNA、タンパク質、脂質)と片っ端から反応します。逆に言うと寿命が極端に短く、生まれた場所のすぐそばしか壊せない、という性質も持ちます。
ここで鉄が引き金になっている点が重要です。鉄の過剰が体に悪い理由の1つがこれで、鉄キレート剤(デフェロキサミン)の意味にもつながります。
脂質過酸化への連鎖
図の右端です。・OHは、細胞膜の脂肪酸(RH)から水素を引き抜きます。
・OH + RH → H₂O + R・(脂質ラジカル) R・ + O₂ → ROOH(過酸化脂質)
引き抜かれた側がまたラジカルになるので、連鎖反応になります。1個の・OHが、膜全体を壊していく。これが細胞膜傷害の実体です。
油脂の変敗(油脂の変敗の反応機構|ラジカル連鎖反応で覚える)とまったく同じ反応が、体の中で起きていると考えてください。食品の単元と毒性の単元が、ここで1本につながります。
活性酸素を「わざと作る」毒
この単元のあとに出てくる物質のうち、自分では毒性を持たず、活性酸素を作らせることで毒になるものがあります。
- パラコート(ジピリジリウム系除草剤):体内で電子を受け取ってラジカルになり、酸素に電子を渡してO₂⁻を作り続ける。酸素の多い肺でいちばん活発に回るので、肺線維症で死に至ります。治療で酸素を投与すると、かえって悪化します
- 放射線:水が分解して・OHができる。酸素があると障害が増える(酸素効果)
どちらも「酸素があると悪化する」という同じ顔をしています。活性酸素が主役だからです。
パラコートはジピリジリウム系除草剤パラコート|治療法がなく肺線維症に至る機序、放射線の酸素効果は物理の被曝の生体影響で扱います。
国試ではこう問われる
| 回 | 問われ方 | ポイント |
|---|---|---|
| 第103回・必須 | 選択肢にSOD・NADPHオキシダーゼ・GSH-Px・カタラーゼ・メタロチオネインが並ぶ | NADPHオキシダーゼは活性酸素を“作る”側。消去系と混ぜて出される |
| 第110回・第111回 | カタラーゼ・GSH-Px・SOD | 15年でカタラーゼ5回・GSH-Px5回・SOD3回。直近5年に集中している |
| 頻出の形 | 「セレンを含むのはどれか」 | グルタチオンペルオキシダーゼ。ここだけ非金属 |
NADPHオキシダーゼだけは向きが逆です。好中球が細菌を殺すためにO₂⁻を“作る”酵素なので、消去系の選択肢に紛れ込んでいたら誤りです。ここは確実に得点したいところです。
まとめ
- 流れは ³O₂ → O₂⁻ → H₂O₂ → ・OH の一本道
- SOD = O₂⁻担当、Cu・Zn / Mn / Fe
- カタラーゼ = H₂O₂担当、Fe
- グルタチオンペルオキシダーゼ = H₂O₂担当、Se(セレン)。ここだけ非金属
- フェントン反応(H₂O₂ + Fe²⁺)で最強の・OHができる
- ・OHは脂肪酸から水素を引き抜き、連鎖的に膜を壊す
- パラコートと放射線の酸素効果は、どちらも活性酸素が主役
- NADPHオキシダーゼは作る側。消去系の選択肢に混ぜられる
次は内分泌撹乱物質(環境ホルモン)|受容体別に覚えるを読んでみてください。ここから有害化学物質の各論に入ります。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。