
「化学物質の分析」は、物理の中でもっとも覚えることが多いと感じられる分野です。試薬名、指示薬、検出器、装置の名前……次から次に出てくるので、真正面から暗記しようとすると必ず息切れします。
ただ、この分野にはきれいな骨組みがあります。
- 道具と言葉を揃える(分析の基本)
- 溶液の中のつり合いを扱う(溶液中の化学平衡)
- あるか・どれだけあるかを調べる(定性分析・定量分析)
- 混ざったものを分ける(分離分析法)
- 臨床現場で実際に使う(臨床現場の分析技術)
この5段階の順に並べ直すと、ばらばらに見えた知識が1本の線になります。この記事では全体の地図を先に示し、そこから各記事にリンクしていきます。個別の単元に入る前の見取り図として、また直前期の総復習として使ってください。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。物理の解説授業は分光分析法の範囲をYouTubeで無料公開しているので、読むよりも動画で一気に見たい人はそちらもどうぞ。
① 道具と言葉を揃える
体積を測る器具の精度の比較、真度と精度の違い、検出限界と定量限界、そして日本薬局方の「精密に量る」「正確に量る」。この先のすべての単元の共通言語がここにあります。分量は少ないので、真っ先に固めてしまうのが得策です。
② 溶液の中のつり合い
溶液中の化学平衡は、水の中だけの話(酸・塩基)と、2つの相のあいだの話(分配・沈殿)に分かれます。
→ 酸・塩基平衡の基礎:KaとpKa、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式
Kw、Ka と Kb の関係、[H⁺] = √(Ka·C)、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式、分子形分率。pH は分子形とイオン形の“比”で決まる——この一文がこの単元の核心です。
基本事項を実際の国試問題(第103回 問96、第104回 問91)にどう当てはめるか。「使う式を先に決めて、必要な数値を集めに行く」という手順を確認します。
真の分配係数と見かけの分配係数、溶解度積 Ksp を溶解度 s で表す方法、共通イオン効果と異種イオン効果。分子形分率が再登場するので、酸・塩基平衡の直後に読むと理解が速くなります。
③ あるか・どれだけあるかを調べる
炎色反応の語呂、そして官能基ごとの確認試験。構造式を見て「この官能基だからこの反応」と反射で結びつけるのが解き方です。
標定とファクター、本試験と空試験、そして5つの滴定(中和・非水・キレート・沈殿・酸化還元)。表の「標準液・標準試薬・指示薬・測るもの」の対応を押さえるのが最短ルートです。
この2記事は、範囲が広いわりに国家試験の正答率が低い問題が多いところです。全部を完璧にするのではなく、代表例だけ確実にして選択肢を削る——そういう戦い方をする単元だと割り切ってください。
④ 混ざったものを分ける
ここから分離分析法です。クロマトグラフィーと電気泳動法の2本柱で、原理がまったく違います。
保持係数、クロマトグラムの読み方(分離係数 α・分離度 Rs・シンメトリー係数 As・理論段数 N)、そして定量法3種。Rs ≧ 1.5 で完全分離、未分離なら α = 1 で Rs = 0 はセットで問われます。
→ クロマトグラフィー各論:順相・逆相・イオン交換・アフィニティ
5つの分離原理、順相と逆相の定義、光学異性体の分離、ガスクロの検出器(語呂つき)、薄層とろ紙。
移動度が何に比例・反比例するか、等電点電気泳動法とゲル電気泳動法、SDS-PAGEの前処理の意味、キャピラリー電気泳動と電気浸透流。
⑤ 臨床現場で実際に使う
→ 臨床現場での試料前処理法:溶媒抽出・固相抽出・除タンパク
夾雑物を除く3つの方法。固相抽出は液体クロマトグラフィーとほぼ同じ整理なので、④を終えてから読むと一気に片づきます。
→ 臨床現場のセンサー技術:グルコース電極・パルスオキシメーター
pHメーター、グルコース酸化酵素を用いた電極法、パルスオキシメーター、そしてイムノクロマト法。パルスオキシメーターはランベルト・ベールの法則がそのまま使われているので、分光分析法とつなげて覚えられます。
→ 画像診断技術:X線CT・超音波・シンチグラフィー・MRI
X線・磁気・音・光・放射線——何を使って体の中を見ているかで並べ直すと、まとめて整理できます。
分光分析法とのつながり
マインドマップ上では、機器を用いる分析法(分光分析法・X線分析法・質量分析法)が「定性分析・定量分析」と「分離分析法」のあいだに位置しています。
クロマトグラフィーの記事でも触れたとおり、クロマトグラフィーで分離してから、MSやIRにかけるという関係になっているので、両方を行き来しながら読むと理解が立体的になります。
ランベルト・ベールの法則を頂点に、紫外可視・蛍光・原子スペクトル・IR/ラマン・旋光度を整理したハブ記事です。
この分野の攻略方針
最後にもう一度、戦い方の話をしておきます。
「化学物質の分析」は、面白い分野ではありません。理屈で導けるところ(酸・塩基平衡、クロマトグラムの指標、パルスオキシメーター)と、覚えるしかないところ(試薬名、指示薬、検出器)がはっきり分かれています。
ですから、
- 理屈で導けるところは、導き方ごと覚える(そのほうが速く、忘れにくい)
- 覚えるしかないところは、代表例だけに絞る(全部やろうとすると破綻する)
この使い分けをしてください。そして覚えたら、領域別の過去問をまとめて解いて、1問ずつに「これは何の問題か」というラベルを付けていく。それがこの分野でいちばん効率のよい進め方です。
物理を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、物理という科目のほんの一区画です。実際には、物質の物理的性質から化学物質の分析、放射化学までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
公式をバラバラに覚えようとすると物理は苦しくなりますが、「この式がどこから来て、どこにつながるのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
物理のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1冊にまとめたPDFです。無料サンプル(分光分析法の範囲)と、地図をたどりながら話すYouTubeの講義動画があるので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。